4組  白石 他石

 

 泰山は中国山東省にある名山であり、五嶽の一つであって、泰山を紹介した中国の古典には多くのものがある。孟子のなかに、「孔子が東山に登りて魯を小なりとし、太山(泰山)に登りて、天下を小なりとす」の文章があるが、高い山に登って下をみれば、すべてのものが小さく見え、大きな観点にたって、小さな意見や事柄にこだわらなくなるという意味であろう。

 秦の始皇帝を助け天下統一の功をたてた李斯が戦国秦策のなかで、

 泰山不譲土壌、故能成其大、河海不擇細流、故能成其深、王者不却衆庶、故能明其徳
 (泰山は土壌を譲らず、故に能くその大をなす、河海は細流を択ばず、故に能くその深をなす。王者は衆庶を却けず、故に能くその徳を明らかにす)

 とのべているが、泰山はどんな土でも、よりごのみをせずに受け入れるので、大きくなったという意味で、度量が広範なものほど、多くの人をまとめ、大きな目的を達成することができることを示唆している。

 世はまさに低迷し、なにがおこるかわからない不安定性、不確実性の時代である。このとき程、人間それ自体の重みを感ずるときはない。

 現代は前例、とりきめなども無惨にうちひしがれ、また計画、予定、予測なども簡単に反古にされる。どんな些細な意見や一見つまらないと思われるものも、研究に値するかもしれない。廃棄物の中から資産を見出す時代となってきた。

 泰山の教訓を目標として、人生を歩んできたが、思うように進んでいない。それに反して、本クラブの会員の方々が、各界においてこの教訓を身につけ、それぞれの手腕を発揮されていることは喜ばしいかぎりである。