「平和と抱き合う経済〜日本の選択と呼びかけ」
浜 矩子さん(同志社大学教授)の講演
を聞いて考えました
大泉町  薮田剛由

 私は、先日、東京小金井市で開かれた、「いのちと平和をつなぐ集い」で、浜先生の講演を聞く機会がありました。その講演の出だしが、大変意表を突くものでした。キリスト教の旧約聖書にある「慈しみとまことはめぐり合い、正義と平和は抱き合う」という教えから、先生の講演の題目がきまり、その流れで、講演の結論が導き出されるというもので、まことに論旨一貫、極めて説得力のある話だと深い感銘を受けました。(「赤旗」5月26日付1面に、浜さんが登場しています)
 先生は、「しかし、『慈しみとまことはすれ違い、正義と平和はいがみあう』関係になっているようで、聖書の説くようにはなっていないのが現実の世界だ」と述べ、それが私に、「『アベノミクス』ではなく『ド アホノミクス』と言わせるのだ」と喝破していました。
 安倍首相の「成長戦略」とは、「日本を企業が一番活動しやすい国にする。日本が世界をリードする。そして『富国強兵』で世界を制覇する。」というものです。そのため、金融緩和による円安・株高の推進、消費税の増税、売国的ТPPへの参加、原発や武器の輸出、介護保険の改悪や「生涯派遣」を生み、人間を軽視する労働環境、そして秘密保護法を制定し、集団的自衛権の行使を容認し海外で戦争の出来る国にしようとしているのです。
 それが今日のグローバル時代を勝ち抜く道だと、「ぼくちゃん、世界一になるんだもん」と自分の思い込みに過ぎない「まこと」を押し付け、他者への慈しみのかけらもない思い上がりは、人間離れしているとしか言いようがありません。ただこの「思い込み」の感染力は、マスコミの応援もあり、相当なものです。ここで、私たちは戦前の世界で、「自分さえよければ」と覇権を競い合い、あの悲惨な戦争に突入して行ったことを、学ばなければならないと先生は強調しています。経済は、国民の幸福のためにこそあるもので、「平和と抱き合う経済」でなければならないのです。
 浜矩子先生は、経済の現場の経験が豊かな経済学者ですから、ここで「そもそも経済とは何か」と問い、「人間の生き方の礎としての経済は、人間の尊重なくしてあり得ない」と断言し、マルクスを挙げるまでもなく、その以前の経済学の父と言われたアダム・スミスが「人間社会は相互の共感で成り立っている」と言っていると言及し、経済のあるべき姿とは何かを明らかにします。
 激しい国境なきグローバルな競争の時代である今日は、生き残りをかけた弱肉強食、淘汰の時代であるわけですが、同時にもう一つの力学、共生・相互依存の法則にも支えられていると指摘しています。何処のジャングルでも生態系のトップに立つ強者でさえも、一匹、一人では生きていけない。まして人間社会は、大企業や大富豪だけでは、成り立たない。社会を構成している一人一人の存在なしには、大企業も大富豪も国家も存在することが出来ない。先生はそのことを、東日本大震災で、福島のある小さな自動車部品工場が生産停止に追い込まれた時、世界中の自動車生産が止まった事を例に挙げましたが、私たちはそうした例を他にも沢山知っています。
 だから安倍政権の、人間を軽んじ、原発や武器を輸出し、平和を破壊する行為は経済とは呼ばない。だからアベノミクスではなく、ドがつくアホノミクスと言わざるを得ないのだ。先生は、自分の思いだけを貫こうとするのではなく、他者への慈しみがなければ人間の社会ではないことに、揺らぐことのない確信を持とうと呼びかけました。
 それにしても、「庶民は無力だから」と私たちは、いつも動揺しがちなわけですが、先生はそれを防ぐ秘密の方法があると教えてくれました。それは「陰謀を企む」という庶民の知恵のことで、全国津々浦々で、さまざまな規模のこうした陰謀集団が増え、さまざまな陰謀が企まれれば、世の中は確実に変わる。
 先生は最後に、「今日、私の話を聞いた人は全員『陰謀に加担した』事になりますよ」と激励してくれました。