現職外交官のキューバ賛歌

現職の外交官のキューバ讃歌

「前駐キューバ日本大使から見た最近のキューバ」の講演会に参加して
2013・5・31  薮田剛由

私は先日、日本・キューバ友好協会主催の講演会で、現職の外交官(2009年までキューバ大使、現在、文化交流担当大使、北極担当大使)である西林万寿夫さんの講演を聞く機会がありました。
友好協会の鶴田理事長が、当日のあいさつで述べていましたが、キューバ大使をやった人は、田中三郎さんをはじめ、キューバについての著書を書く方が多いとのこと、やはりキューバの地やそこの人の魅力が、そうさせるのでしょう。
 西林万寿夫氏は、現職の外交官であるから、いくらかの制約はあると思いますが、こうした場での講演や著書「したたかな国キューバ」(アーバン・コネクションズ)では、かなり大胆なキューバへの讃歌を述べていると、お聞きしました。いくつかの点で感想を述べてみたいと思う。

 1、キューバの指導者
キューバが深刻な危機の中でもしたたかに生き延びている要因について、西林氏は、いくつか列挙しているが、なるほどと納得させられるものが多い。わけても指導者たちの清貧ぶりは、ヴェトナムのホーチミンと並んで特筆されるのは当然と思う。元キューバ大使の田中三郎氏もフィデル・カストロを「高貴な魂は無限の存在に回復する」と絶賛している。
また、2011年の第6回党大会では、女性とマイノリティの登用が重視され、中央委員115名中、42%が女性(前大会では13%)、アフリカ系が31%(同21%)と大きく改善されたが、政治局員15名の平均年齢は67歳と、若返りには成功していない。

 2、持続的な発展する社会主義を目指す経済社会改革
党大会では、「社会主義計画経済を維持しつつ、市場経済を考慮する」と決定。これは著者が言うような「改革派、保守派のバランスの結果」ではなく、「持続的に発展する社会主義経済をめざす」ための当然の路線と多くの人に受け止められている。それは、大会で提起された、「国営部門の縮小と民間部門の拡大」「農業・工業部門の拡大で輸入の減少」「国民生活における規制緩和」等と着実に具体化されつつある。西林氏は、キューバについて「サトウキビと共に歩んだ国」と紹介していたが、独特の見方で面白いが、今のキューバは、これを乗り越えようとしていることに注目してほしいと思う。一気に進めた市場経済を通じての経済改革が経済格差等さまざまな問題を抱えているいわゆる「社会主義国」の現状をみる時、キューバの改革は、世界の注目を集めている。また、共産党の一党独裁の体制のもとで、どう国民の意見を吸収して行くのか、また、官僚の腐敗とどう戦うのか、その挑戦に注目し期待をしたい。

 3、国際的地位を向上させている外交の力
キューバは、南北アメリカにおいて、米国とカナダ以外の33カ国が加盟するラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)の議長国を今年1月から務めており、日本の人口の10分の1ぐらいの国ですが、その駐ハバナの外国大使館(実館―大使が駐在している大使館)は105カ国に及んでおり、米州諸国でキューバと外交関係がないのはアメリカだけである。(キューバが外国においている大使館は124カ国、ちなみに日本は、142カ国に大使館を置いている)それが20回にわたる圧倒的多数でアメリカの対キューバ経済封鎖の不当性を糾弾する国連決議の採択に実っている。「外交の力で、話し合いで、自らの主張を伝え、大国の不当性を正だす」というやり方で、見本を示しているのではないか、最近の日本安倍政権の近隣諸国との稚拙な反動的な対応と比べれば、大いに学ばなければならないと思う。