最近私が感銘を受けた本

『製造業が国を救う』
    副題:”IN PRAISE OF HARD INDUSTRIES 技術立国・日本は必ず反映する”
        Fingleton著、中村仁美訳、早川書房
 エーモン・フィングルトンは、1948年生まれで日本在住の経済ジャーナリスト。トリニティ大学で経済学、数学、英語学を学んだのち、ファイナンシャル・タイムズやフォーブスなどの記者としてロンドン、ニューヨークで活躍。1986年以降は活動拠点を日本に移している。
 この本は、放送大学教授の森谷正規氏が2000年2月27日の日経新聞の【今を読み解く】欄で「21世紀も重要な製造業」として紹介している3冊の本のひとつです。このコラムで知って購入しました。そこでは、森谷教授は次のようにこの本の紹介を行っています。

 いま異常なほどにeビジネス、IT革命が持て囃されている。情報産業こそがこれからの産業発展を支える柱だといわれる。しかし、日本在住の経済ジャーナリストであるエーモン・フィングルトンは、情報中心のポスト工業化論者に真っ向から反駁する。
 彼は、この著書の中で三つの重大な問題点があると指摘する。
 その第一は、雇用バランスが悪いこと。ポスト工業化が創出する雇用の大半は、頭脳労働者で一部に過ぎず、逆に一般の労働者の2割が失業することになると云う。
 第二に、所得の伸びが鈍いこと。国全体の所得についていうと、米国でポスト工業化が進んだこの20年間の所得の伸びが、スイスや韓国など製造業中心の国に比べて相当に低いことを、数字で明示している。
 第三に、輸出競争力が弱いこと。ソフトやサービスは、製品のような大量輸出ができない。
 フィングルトンは、このように情報産業の盲点を厳しく突いていて、強い説得力がある。
 本書の第3部「進化を続ける製造業」では、底力をみせるエレクトロニクス産業、造船・繊維・製鉄など成熟し衰えていくと思われている産業の逆襲、未来を拓く製造業の新分野である代替エネルギー・新交通システムなど、具体的に強みを詳説し、明るさを与えてくれる。
 そして、「先進諸国は消費財の供給を通じて後発国弐繁栄を広げるのではなく、生産財の供給、すなわち後発国の国民が十分な量の消費財を自国で生産するのに必要な物資を提供することで、反映の基礎を築くのである」と、日本や米欧の先進工業国の進むべき分野を指摘する。