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PHOTOS 保存版 01(写真と文)


「蛍雪時代」の表紙撮影

早乙女立雄
2007.10.08寄稿

春の訪れを待ち遠しい3月の肌寒いある日曜日のこと。大学は春休み中。在京の自動車部
員に召集の連絡。旺文社から、部活の様子を撮影したいので協力してくれと言う訳だ。

午前中に学校へ到着したが、我々自動車部員以外の学生の姿はほとんど見当たらなかった。
間もなくすると、カメラマンとモデルのかわいい女の子が到着。
雑誌のモデルやCFにも出たことも有ると言う二十歳位の彼女は、じつに垢抜けしていて当時
数少ない一橋の女子大生とは、ちょっと雰囲気が違うような感じがした。
もちろん我々野郎どもと不釣合いなのは言うまでも無い。

部員の我々は、そろいの赤ジャンと白のつなぎに身を包み、兼松行動前あたりに集合。
(あまり汚れていないつなぎは、LL番の2着だけ。大柄の者が着ることに。)

本番が始まる。
2〜3台並べた部車の周りにそれとなく集まり、彼女を中心に、なにかを会話しているポーズ。
向きを変えたり、立ってみたりすわったり。かれこれこ一時間、ぱちぱちと撮影は進み、休憩に
入った。
その間何枚撮ったかは分からないが、カメラマンの様子は満足したような雰囲気ではなかっ
た。
映されている方も、どこか不自然でぎこちない感じもした。
彼女は木陰でくつろいでいた。

休憩時間に緊張感も取れて、車の前で野郎だけが談笑していると、そこにカメラマンが寄って
来て、「そのままの状態で話を続けて」と、また撮り始めた。
これはどうせ“ON AIR”されないだろうと、全員リラックスした雰囲気。
「折角だから始業点検の時のように、ボンネットを開けてみよう」
「皆で覗き込んでいてもなんだか解からない、工具とか部品などはありませんか?」
とっさに誰かがエアクリーンフィルターを取りはずした。
カメラマンが「そこに取り出したものをテーマに、みんなで会話してください」
部員の一人が「これはなーんだ?」といった瞬間、訳も無く全員が噴出してしまった。

いつものような和やかな雰囲気に戻った。


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