演奏旅行までの道のり 橋本 民生 第1ステップ:まずはアンケート 7回目の海外演奏旅行の担当を承った私は2018年8月~9月の実施を目指して、行き先をどこにするかの検討から始めました。当時の藤原団長、小室副団長と相談をして、「1.イギリス(スコットランドまたはウェールズ)」「2.スペイン(バルセロナまたはバスク地方)」「3.北欧3国、フィンランド、バルト3国またはロシア(サンクトペテルブルク)」「4.オーストラリアまたはニュージーランド」と大雑把な方面を定め、アンケート調査を行うことにしました(2016年12月~翌年1月)。 アンケートは1位「3.北欧3国…」、2位が僅差で「2.スペイン…」という結果なりました。アンケート結果を踏まえ、この2方面を並行して情報集めを行い、そのうえで行き先を決めることにしました。旅行代理店は特段の議論もなく、前回2015年の中部イタリア演奏旅行でお世話になり、総じて評判の良かった株式会社シーティーシー(CTC)にお願いすることになりました。 第2ステップ:プランニング 2017年2月初め、藤原・小室・私の3人で浜松町駅近くのCTCを訪れ、プランニングをお願いしました。CTCの応対は社長高野氏、営業担当山田氏(山田氏はジョイントコンサート国際委員会の名刺も併せて提示) 4月の初め、CTC の山田氏からメールでリトアニア在住の日本人コーディネーターとコンタクトできたと連絡あり、4月中旬にはラトヴィアのリガを拠点に活動しているリガ工科大学OB男声合唱団”Gaudeamus”が我々を歓迎したい、という情報が入りました。4月末には先の日本人コーディネーターを通じてリトアニアのヴィルニュスで活動している男声合唱団”Varpas”の情報が入り、バルト3国の情報が先行して入ってきました。 一方、スペインからの情報は依頼から3か月になっても、いっこうに入って来ず、しびれを切らした私たちは、CTCを再度訪問しました。 スペイン人の国民性なのか、1年半先のことを問い合わせても、なかなか反応がないとのこと。このとき、早くもバルト3国演奏旅行の行程案を受けとりました。 スペインからの情報は、6月半ばになってようやく入ってきました。マドリッド郊外の”Coral Polifonica Alcorcon”(混声合唱団)、続いてバレンシアの”Coro Social de la Unio Musical”(混声合唱団)です。6月末にはもう1団体未定ながらスペイン演奏旅行の行程案を受領しました。 その後しばらく目立った動きはなく、バカンスに入って情報の動きがないのかと勝手に解釈などしながら、8月下旬には運営委員会で進捗状況の中間報告を行いました。 第3ステップ:つまずきました。 9月末の金曜日の夕刻CTCの社長高野氏から突然、事業継続できないので旅行のお手伝いができなくなったと電話がありました。営業担当の山田氏は今日付で退職する(した)とのこと。理由はテロの頻発で、音楽交流旅行のマインドが委縮し、キャンセルが続出、事業が続けられなくなったから、とのこと。青天の霹靂のような話であった。電話を置いて、しばらく呆然としたものの、“てるみくらぶ”の事件からまだ日も浅く、代金を払い込む前で良かったと胸をなでおろして、自ら慰めました。藤原・小室両氏と連絡を取り、善後策を探りに、ダメもとでCTCを訪ねることにしました。10月初めMGCの練習前、また3人でCTCを訪問、人けのないオフィスで社長高野氏と面談しました。 MGCの旅行計画を引き継いでくれそうな同業他社の紹介をお願いしたが、はかばかしい返事はなく不調。5月に訪問した時にメモしておいたリトアニアのコーディネーター「岸田さん」の名前を挙げると、MGCに連絡するよう彼女に頼んでくれると約束してくれました。 催行予定から1年を切った段階で大きくつまずくことになりました。 第4ステップ:岸田麻里亜さんとの出会い 岸田さん(フルネーム:岸田麻里亜さん)のレスポンスは驚くほど速く、依頼した当日MGCの練習から深夜帰宅するとすでにメールが入っていました。 さて、岸田麻里亜さんとはどういう方なのでしょうか?何も分かりません。 不躾ながらプロフィール(リトアニア在住歴・コーディネート歴・音楽経験など)を直接ご本人に聞いてみることにしました。これもクイックレスポンス。大学卒業後、都内の旧ソ連方面への旅行を取り扱う旅行会社に4年勤務し退職、リトアニア国立ヴィリニュス大学に留学、その後琥珀加工メーカー勤務を経て、現地で観光ガイド・文化イベントのコーディネートなどを行う個人企業設立という経歴を教えてくれました。中学・高校では吹奏楽部でトランペットを吹いていたそうです。 ちなみにネット検索をすると、「世界の村で発見!こんなところに日本人」というテレビ朝日の番組に岸田さんが取り上げられた記事がたくさん載っていました。また茨城県の潮来中学の全校生徒が折った千羽鶴をリトアニア・ヴィリニュスの国立がん病院小児病棟に贈呈している岸田さんの画像も見当たりました。 この段階で、演奏旅行を組み立てていくには岸田さんにすがるしかない、と直感しました。 この際スペイン案は捨てて、行き先はバルト3国に絞り、演奏会・観光の部分は岸田さんとプラン作り、フライト・ホテル・観光バスなどは信頼のおける大手旅行代理店に頼むと腹を決めました。 第5ステップ:右往左往 バルト3国を通じて岸田さんにコーディネートしてもらい、あとは大手の旅行代理店に頼めば何とかなるだろうと、岸田さんに探りを入れてみました。 ところが、岸田さんの返事は、リトアニア内の演奏会の企画運営・観光ガイドは喜んでお引き受けするが、テリトリーはあくまでリトアニア国内のみということでした。 今回のプランニングで最初に名前の挙がった、ラトヴィアのリガ工科大学OB男声合唱団”Gaudeamus”は、その成り立ちも年齢構成もMGCによく似ていて、繋がりが切れてしまうのはもったいない気がしました。岸田さんにラトヴィア在住の日本人コーディネーターをあれこれ手を尽くして探してもらいましたがうまくいかず、国境の壁の厚さを思い知らされました。やりとりをする中で、岸田さんからエストニアであれば日本人コーディネーターを紹介できそうという話が出てきました。そこで名前の挙がったのがツムラーレコーポレーション・タリン支店の西角あかねさんでした。西門さんと連絡が通じたのが、岸田さんと初めて連絡を取り合ってから1か月後でしたが、西角さんからも前向きの返事、エストニアの首都タリンにコンタクトのとれる女声合唱団があるとのことでした。ヴィリニュス→カウナス→タリンと繋げば演奏旅行の骨組みは出来る。光明が見えてきた瞬間でした。 第6ステップ:代理店選び、 西角さんとのメールのやりとりで勤務先のツムラーレコーポレーションは東京営業所があり、バルト3国のランドサービス(バス・ホテル・観光ガイド・レストラン)や日本からの航空券の手配もできるし、演奏旅行後の北欧・ロシア旅行も手配できる、よろしければお尋ねくださいとありました。 聞いたことのない名前の会社で、CTCの二の舞を恐れましたが、ネットで調べてみると、簡単な記事でしたが、2007年12月「JTBは北欧のランドオペレーターのツムラーレの買収を発表した……」とありました。その後の情報はありませんでしたが、話を聞きに行っても無駄ではなさそうに思えました。 藤原・小室両氏と3名で11月中旬にツムラーレを訪問、応対は後の演奏旅行で添乗員を務めてくれた河村さんでした。ツムラーレはエンドユーザーにはなじみがないが、大手旅行業者に旅行プランを卸売りするランドオペレーターで、JTB の100%子会社。日本におけるマーケットシェアは北欧60%、バルト3国はほぼ100%のしっかりした会社であることが分かりました。 1時間半ほどの面談を経て、11月末を目途に「2018年9月13日~9月22日、リトアニア→ラトヴィア→エストニア のルート」で見積もりの作成を依頼して帰りました。 河村さんからは約束通り、11月末に。見積書が届きました。 これからやるべきことは、見積りの妥当性のチェック、無駄をカットしコストを切り詰めること、岸田さんとツムラーレの役割分担と連携を上手に行い、魅力的な交歓演奏会・観光ツアーを企画すること、そして最も大事なことは、演奏会をきちんと行える参加者の確保です。 第7ステップ:催行決定 12月に入って共演予定合唱団の映像・観光予定地の情報をメーリングリストに連日流し、プロモーション行動に努めました。再びアンケートを行い、目途としてきた30名の参加が見込めることで、年明けの1月4日の運営委員会に諮り、ようやく催行決定に至りました。 その後藤原さんにヘッドになっていただき実行委員会を組成し、一気呵成に実施に向けて 走ることになりました。 その後の顛末は、幾田さん編集のこの旅行記で参加者の皆さんの生々しい体験談をお読みいただきたいと思います。 以上 |