「いざ立て戦人よ」 (作曲;ジェイムズ・マグラナハン)
「おくるなあだに」???

・・・・団員の語らい・・・・

By マーキュリー・グリー・クラブ 2000.12.09

T2 Iです。

歌詞を覚えていると、意味の分からない言葉にいきあたりました。結局、そこでいつも詰まってしまいます。「いざ起て戦人よ」1番「おくるなあだに」 とありますが、「あだ」 とは?
いまさら何を?とお叱りをうけそうですが、どなたか宜しくお願いします。


B1 Iです。

私は東京生まれなので、全く勝手に解釈していたと言うだけのものですが、「仇討ち」などという時の仇、即ち敵のことでしょう。


T2 Fです。

「あだ」は「仇」「敵」であるとの解釈のようですが、小生は違うのではないかと思います。仇、敵としたときは「おくるな」の意味が分かりません。「あだ」には仇,敵の意味のほか「婀娜な姿の洗い髪」の「あだ」と、もうひとつ「徒」「空」と書いて「移り気」「真心のないさま」「むだ」を意味する使い方があります。

この詞の場合は「遅くるな徒に」で「まごまごして遅れないように」と歌っているのではないかと思いますが、どうでしょうか。


B2 Kです。

小生手持ちのメルクール愛唱曲集(昭35同期編)は英文の歌詞になっておりますが、一番、二番の始めの部分は次のとおりです。

1)Rise ye children of salvation all who cleave to Christ the head, wake arise oh! mighty nation are the form on Zion tread...........

2)Saint and heroes long before us,firmly on his ground have stood, see their banner waving over us conquerors this Jesus blood........

スペリングに疑問の個所もありますが、我々が歌う藤井泰一郎さんの歌詞は直訳ではありませんが上記英文に沿った形で作詞(訳詩)したのでは?と愚考いたします。そして英文歌詞は少年十字軍のことをうたったのでは、と勝手に考えております。

conquerors という言葉が何回も登場しますし、「おくるな あだに」はconquerors(敵)におくれをとるなよ、と解釈したいのですが?


T2 Fです。

「あだ」というコトバは現代語ではあまり「敵」という意味では使わないように思いますが、たしかに「仇ナスもの」「害を与えるもの」といういみから当然「敵」という意味が含まれ、辞書にもちゃんと載ってますね。「おくるなあだに」の前のフレーズは「おおしくすすみて」となっております。この文脈からは「雄々しく前進し,敵に後れをとるな」と解釈するのが自然のようです。(したがって「おくるな」は「遅るな」ではなく「後るな」であろうと思います)

なお(ケチをつけるわけではありませんが)小林さんは「conquerors(敵)」と書かれていますが、確か英語の詞には「conqurors are we」とあったように記憶しています。したがって、「勝つのはオレたちだ」ということで「勝利者」の意味ではないでしょうか。


B2 Kです。

ご指摘の個所は英文歌詞の最後のくだりのthrs' the blood of the Christ our ransome more than conquerors are we が該当すると思いますが、これは倒置構文でwe are more than conquerors thrs' the blood of the Christ our ransome と読み直すと、キリストの贖罪のお陰で我々はconquerorsより強い・・・・という意味になり藤井泰一郎の歌詞「せいぎのまもり」につながります。つまりconquerorsはわれわれではなくて、敵のことだと思いますが、如何でしょうか?


B1 Iです。

「おくるな」 は 「負けるな」だと思います。広辞苑には 「後る」=「負ける」 とあり、敵に負けるな でいいのではないでしょうか。


小室です。

英文解釈を読んでいるうちに、「おくる」は「臆する」ではないか、という気がしてきました。古い広辞苑を引いてみると、「おくる」の5番目に「おじる。臆する。」と載っています。「敵に臆するな」と読めるのではないでしょうか。


T1 石林です

 私は「あだ」は何の疑いもなく、「徒」だと思っていました。野菜などで花だけで終わるものを「あだ花」=「徒花」といいます。「……あだに」は「無駄に」「いたずらに」の意味だと思っています。 歌詞の全体の意味からするとこれから「いくさに立ち上がれ!」という詩ですから別に「後れる」云々ではないし、まして、もし少年十字軍の話なら、後れるとか先を越すとかでなく、完全にイスラエルはイスラム教徒の支配下にあるものであり、それを取り戻したいということのはずですから。さらに「後るな」は文法的にもおかしいのではないでしょうか。「後れる」の文語に確かに「後る」があるでしょうが、「後れるな」の意味なら「後るるな」であろうと思います。

したがって私は「無為な時を過ごさずに」聖なる闘いに立ち上がれ!だと思うのです。活用形を混同することは今も「ら抜き」などと問題になっていますし、よくあることではありますが。


 

(掲示板の書き込みより)

吹上千洋(ふきあげちひろ)と申します。 現在、東北大学混声合唱団に所属しているものです。

貴団のHPの「いざ起て」論を読ませていただきました。その中に、「いざ起て戦人よ」の出自が何であるか? という記述がございましたので、 おせっかいながら、私の知っていることを書いてみようと思いました。これは「ハーモニー」という合唱連盟の会報を参考にしてあります。くわしくは、ハーモニーのNo.110を参照してください。

この曲は、グラナハムという人に作曲された曲であると楽譜に記述されていますが、 実は、それは誤りであり、ジェイムズ・マグラナハン(1840-1908)という アメリカのゴスペル・ヒム歌手(作曲者、楽譜の編纂者)の作曲らしいです。

貴団のメンバーの参照している英語の歌詞は讃美歌に関係が深く、実際、讃美歌に同タイトルの、もととなった曲があるそうです。作曲された目的などは、アメリカのゴスペル・ヒム運動を勉強するとよいと思われます。

自団でも、「いざ起て戦人よ」を愛唱しております。 2・3年前にたどり着いた解釈で、「あだ」は「仇・敵」という意味だと思って歌っています。ちなみに、『いざ起て』は日本語の歌詞を読んでいくと「守る」戦いだということに気付きます。 決して、侵略をする歌ではありません。 まさに、「さあ、みんな立ちあがろう」という意味合いを持った歌だと思います。


(掲示板の書き込みより)

千葉県柏市で男声合唱をやっている大島と申します。「いざ起て論」を拝見したのでご参考に書き込みさせてください。

「いざ起て戦人よ」の原曲は"Song of the Soldier"というアメリカのプロテスタントの賛美歌hymnです。作曲したのはジェームス・マクグラナハンJames McGranahan(1840-1907)で、1882年に作曲されています。一般に作曲家グラナハムとなっているのは誤りです。

作詞は当時の有名な福音伝道師evangelistであったウィットル Daniel Webster Whittle(1840-1901)です。ウィットルはドイツのファルックナー Justus Falckner (1672-1723)が書いた賛美歌"Auf, ihr Christen, Christi"の英訳をもとに作詞しています。キリスト教徒は堅信式を受けてキリスト教徒になりますが、司教に額に聖香油を塗られたあと、軽く頬を打たれて「キリストの兵士」になったことを宣言されます。すなわち"soldier”とはキリスト信者を指しているのです。

1

Rise ye children of salvation,

All who cleave to Christ, the Head;

Wake, arise, O mighty nation,

Ere the foe on Zion tread.

(ここまでがファルックナーの英訳)

(refrain) (以下ウィットルの作詞)

Pour it forth a mighty anthem

Like the thunders of the sea.

Thro the blood of christ our ransom

more than conquerous are we.

藤井泰一郎の訳では「おくるなあだに」は「遅るな徒に」です。

 

ご参考に出典を連絡します。

D.W.Whittle http://www.1timothy4-13.com/files/hymns/whittle.html

James McGranhan http://www.cyberhymnal.org/bio/m/c/mcgranahan_j.htm

Rise, ye children of salvation

http://www.cyberhymnal.org/htm/r/i/riseyech.htm

http://www.acronet.net/~robokopp/hymn/riseyech.htm

         (下のwebで元歌のメロディが聴けます)  

 元歌の賛美歌は独語・英語で今も歌われているようです。独語題名は AUF, IHR CHRISTEN, CHRISTI GLIEDER が正です。

Whittleはプロテスタントの福音派ですが、プロテスタント別派の救世軍The Salvation Armyはそのものずばり、信者を兵士Soldier, 賛美歌を軍歌と呼んでいます。ちなみにカトリックでは聖歌、プロテスタントは賛美歌、救世軍だけが軍歌といいます。賛美歌といっても元気のよいものがある訳です。

The song of the soldierは既に米国でも歌われてはいないようで、楽譜の入手ができておりません。どなたか権威のある楽譜を入手されましたら拝見できると幸いです。ご参考に出典を連絡します。

D.W.Whittle http://www.1timothy4-13.com/files/hymns/whittle.html

James McGranhan http://www.cyberhymnal.org/bio/m/c/mcgranahan_j.htm

Rise, ye children of salvation

http://www.cyberhymnal.org/htm/r/i/riseyech.htm

http://www.acronet.net/~robokopp/hymn/riseyech.htm

         (下のwebで元歌のメロディが聴けます)  

 元歌の賛美歌は独語・英語で今も歌われているようです。独語題名は AUF, IHR CHRISTEN, CHRISTI GLIEDER が正です。

Whittleはプロテスタントの福音派ですが、プロテスタント別派の救世軍The Salvation Armyはそのものずばり、信者を兵士Soldier, 賛美歌を軍歌と呼んでいます。ちなみにカトリックでは聖歌、プロテスタントは賛美歌、救世軍だけが軍歌といいます。賛美歌といっても元気のよいものがある訳です。

The song of the soldierは既に米国でも歌われてはいないようで、楽譜の入手ができておりません。どなたか権威のある楽譜を入手されましたら拝見できると幸いです。