「箱根八里」(編曲;林 光)
・・「よちょうのしょけいは」のリズムは?・Part2・・・・

By MGC マーキュリー・グリー・クラブ 2002.05.26

T2 Fです。

日本抒情歌「箱根八里」についてちょっと気になる部分があります。

「ようちょうのしょうけいは」のところですが、林編曲では、「よう」を付点四分、「ちょ」を八分、「う」を四分音符で歌わせていますが、これだと「よちょうのしょけいは」と聞こえます。小生はこの部分は昔から「よう」を二分音符、「ちょう」を3拍目の四分音符、「の」を4拍目の四分音符で歌ってきました。

 「これはやはり一人合点だったのでしょうか。


B1 Kです。

原曲の楽譜を直接確認は出来ませんが、昭和3312月発行の岩波文庫「日本唱歌集(堀内敬三・井上武士編)」を参考にして以下記します。(この本はかなり正確で、信頼できる資料だと思いますので)

   明治30年代、教科書は全部民間で出版されたものばかりであったが、 各出版社の売りこみの競争がはげしくなり、明治3512月、いわゆる 教科書事件の大疑獄が勃発し、代議士や小学校長等合計116人の 有罪者が出た。

そこで、明治364月、政府は小学校令を改正し、小学校の教科書用 図書を国定化する方針を確立した。ただし、修身、日本歴史、地理、 国語読本は純然たる国定教科書としたが、唱歌の教科書はもっぱら 民間出版の検定教科書から採定された。

この前後から、いわゆる文部省編集の唱歌集(明治43714日発行 「尋常小学校読本唱歌(全1冊)」)が出版されるまでの間、いくつかの唱歌集が使われていて、そのうちのひとつである「中学唱歌(東京音楽学校蔵板(ママ))」に、わが「箱根八里」が載っている、のだそうです。

   「中学唱歌」(東京音楽学校蔵板(ママ))
 明治34年(1901今年100周年です)3月発行。38曲の単音唱歌がのせられている。多くは当時、東京音楽学校の教官、学生であったものの新作であるが、中でも、「寄宿舎の古釣瓶」(小山作之助作曲)、「箱根八里」(滝廉太郎作曲)、「荒城の月」(滝廉太郎作曲)などは全国の小・中学校で歌われ、また民間でも愛唱された。

   さて、これに載っている「箱根八里」は・・・・・・
 ハ長調。速度はModerato。問題の個所は、「付点4分(よう)+♪(ちょ)+4分音符(う)+4分音符(の)」で、「(ちょ)+4分音符(う)」の部分にはスラーがかかっています(腸とちゃんと歌わせたかった意図がうかがわれます)。つまり、林編曲と同じです(ただし、林編曲にはスラーがありません)。

   作詞者の鳥居さん(1854~1917)は東京音楽学校教授(音楽通論と国語)。曲は滝廉太郎が東京音楽学校学生時代(21歳)の応募作。

  歌詞の1番には「第1章 昔の箱根」、2番には「第2章 今の箱根」と標題がつけられています。(「今」は明治30年(1887))前後でしょうか。)

   K私見。
  「二分音符(羊)+四分音符(腸)+四分音符(の)」と歌うのは歌いやすいし、意味も通じやすい。それで耳から入るメロディは、楽譜とは別にこのように歌われ伝承されたのではないでしょうか。日本的?旧制高校の寮歌などはこのタイプが多いように思います。どうでしょうか?

  滝廉太郎は、「付点4分(よう)+♪(ちょ)+4分音符(う)+4分音符(の)」とすることによって、「西洋音楽ではこうなるのだよ」と書いた思いが感じられます。


T2 Fです。

 B1Kさん、早速お調べいただき、ありがとうございました。スラーが「みそ」だったんですね。これからは、廉太郎さんの意図を表現すべく歌いたいと思いますが、「羊腸」という言葉をあのメロディに乗せるのはなかなかむつかしいですね。