下

 

(一) 長煙遠く棚引きて
  入相の鐘暮れてゆく
隅田の流れ夕潮に
  オールを軽く浮ばせて
秋西風に嘯きし
  その豪快のあとかたや

 

(二) あゝ一ッ橋空高き
  母校の春の朝ぼらけ
銀杏の梢青葉して
  若き光の冴ゆる時
梧桐の影に語らひし
  その歓楽のあとかたや

 

(三) 瘴(しょう)煙こむる南洋に
  暁天の星さゆる時
寒嵐(かんらん)むせぶ西比利亜の
  荒涼の月仰ぐとき
思ひを馳せて一ツ橋
  母黌(ぼこう)の姿君見ずや

 

(四) 狂瀾(きょうらん)山と湧くところ
  清き理想の海原に
希望の星を涵(ひた)すべく
  さらば我友諸共に
蛟龍(こうりょう)の意気胸にして
  いざ雄飛せん五大州