米国西海岸からの手紙
7組 澤登源治
酔狂なことだが猛暑の8月に半月程米国西海岸を独りで旅行した。動機は単純で長男が十数年前から永住権をとりLOS ANGELESに住んで居り、孫の一人が昨年カリフオルニヤ大パークレー校に合格し一年間の寮生活から7月にアパートに移転したので、おじいさんにキャンパスを案内するからと誘われたのでL.A.とBERKELEYを訪問した次第である。小生は現役時代ロスに3年程駐在した土地勘もあり、編集子より新旧時代の相違や所感を書いてみろと勧められ、思い付くまま本文を記述した次第である。
1)パークレー校
カリフオルニヤ大学はキャンパスの所在地によりBERKELEY校、LOS ANGELES校、SAN DIAGO校等がありそれぞれ独立に運営されて居り、パークレー校は理工文系が揃った総合大学で州立大学の中では全米でもトップクラスである。(尤も米国では有名校は概ね私立が多い。)
パークレー市はサンフランシスコの対岸のオークランド市に隣接して居りキャンパスは小高い丘の緑の中に各校舎が散在して居り、特に東南亜(泰、中国、印度、ヴェトナム等)の諸国に人気があり、これ等の国の官庁・企業などから選抜された優秀な留学生が多数入学して居り、夏季休暇中でもキャンパスを開放し見学者が大勢押しかけていた。米国の大学の入試は共通試験(S・E.T.と称し3回try出来る)、高校の成績、校長の推薦書(特に部活などのリーダーシップや特技)による書類選考と面接によって決定される。日本の様な一発式の人試ではない。また米国の大学は優秀な高較生を募集することに極めて熱心であり、キャンパスを開放して親近感をもたせ選考面接も丁重である。然しながら入学後は一転して苛酷な位に学生をしごき、学生もタフにこれに耐えて勉強する者はやるし、駄目と思えば平気で留年する。正に優勝劣敗である。これに比べ日本の大学の学生はどうなのか日本の将来が憂慮される。
2)民主党大会と大統領選
ロス滞在中に民主党大会が開催され、当日はセンターの有力企業は在宅勤務として出勤せず混乱をさけていた。民主党大会の特色は副大統領にユダヤ系のリーパーマン上院議員を選出したことであり、仮りにゴア氏が大統領になれば、若し彼の任期中に万一の場合はユダヤ系大統領が生れる可能性もある訳で米国建国以来の大事件である。米国で正副大統領にカラーとユダヤ人が選出された前例がない。何故民主党が副大統領候補にユダヤ系を選んだのか、JEWISH
PEOPLEの経済界に於ける圧倒的財力をCATCHしようとしたのか或いはクリントン大統領の相次ぐスキャンダル事件の印象を拭い去るべく身辺清廉な人物としてユダヤ人でも止むなしとしたのか理由はさだかではないが、11月7日の選挙の結果が興味深い。
3)WHITE、YELLOW、BLACK
小生は現役時代にブラジルに5年余、米国に8年勤務し商用の出張などで約50ヶ国を訪問したが、その体験的な感覚から判断するとどうしてもWHITE、YELLOW、BLACKの目に見えぬ人種的障害が年とともに改善されてはいるものの依然として存在していると謂わざるを得ない。現にロスをみても昔からLITTLE TOKYOとして日本人街があり、現在では中国、韓国、ベトナムなど集団的居住区が形成されている。同じWHITEの中でもユダヤ系は土曜日に教会に行き日曜日に店をOPENしている。
言語、人情、風俗、習慣、宗教、教育など良い歴史の間に築かれた民族間の人種的差別の融合解消は仲々困難な問題であり、たとえば人種差別撤廃を掲げる米国でも黒人街のトイレには紙が備え付けていない。持ち去られてしまうからである。教育を通じて改善に努力をせねばならぬが永久に完全には解決されることはないだろうと思う。
小生には2人の二重国籍(日・米)の孫がいるが日常身をもってWHITE、YELLOW、BLACKの問題を体験して居り、時が来れば彼等自身の判断でいづれかの国籍を選択するであろう。
4)グローバル化とNATIONALISM
世の中がコンピューターの進化普及でグローバル化し、インターネットでEメ-ル、電子決済等が実現し、異業種間の合併、国境を超えた多国籍企業の出現で世界はグローバル化し、これが平等の思想を助長し、民族・人種間の紛争を解決するかの如く思われるが、その一方で依然として世界各地で民族間の紛争が絶えない。問題は何んとか血を血で洗うことなくお互に共生の道をさぐって平和な世界を作ることに努力することではなかろうか。国連での解決もその一つであり、抑止力としての自衛権を強固にする軍備も選択肢である。ただ小生の感覚としては国家・民族のNATIONALISMは不滅であり、これを前提として如何に現実的にお互に共生して生きて行くかを考へるべきではなかろうか。米国ですら人権主義のカーターから強いアメリカをスローガンとしたレーガンを大統領に選んだのである。
5)LITTLE TOKYOの衰退
ロスのLITTLE TOKYOは日系人が築いた立派な商店街として親しまれて来たが空家が目立ったのに驚いた(特にレストラン)。原因は日本経済のリストラによる駐在員の激減によるらしく、加えてラスベガスがギャンブルの街から家族も一緒に楽める街へと変身し日本から直行便が運行されてロスの観光地としての魅力が薄れたことにもよるらしい。いづれにせよ日本経済の回復を願って止まない。
6)スモッグ
ロスの光化学スモッグは有名である。主として背後の山脈の為であるが全米一の厳しい排気ガス規制にも拘らず30年前と全く改善されていないのに驚いた。一部の海岸地帯を除いて健康には有害であることは間違いない。原因は年々増加する乗用車とトラックの排気ガスによるものであるが、地下鉄設置を建設の為の増税を嫌って否決した住民投票のツケが廻って来た訳で衆愚の歴史的誤断と云うべきであろう。
孫達とローストビーフをたべにレストランLAWLEY’Sに行った。30年前と同じパーフオーマンスであり風味、値段、VOLUME全てを総合して全米一である。何よりも家族連れで行けるのがよい。諸兄も機会あれば是非試食されたい。 (2000・9・26)
* 5組重松輝彦君のご子弟も同様経験をされている。「60周年(通信特集)」をクリックしてお読みください.。(HP委員)