七組  鴨田 保美


一、
  大学の三年間は、二浪の後漸く憧れのマーキュリーの角帽を被ぶれた喜びと、何んとなくほっとした気持が念頭から離れず、勉強せねばの心構えを押し流して唯、ずるずると過してしまった後悔が先に立って居ます。

二、
  卒業の際、ゼミの山中先生から在学中の勉強は将来の勉強の為の基礎作りであり、或る程度の方向付けをしたに過ぎない。社会に出てからこそ本当に勉強すべきであると言われた言葉が三十数年を経た今日も尚、昨日の如く耳朶にこびり着いて居るが、現実の生活は余りにも業務、雑務に忙殺されて居ることを自己弁護に、落着いた勉強をしないままに、山中先生のお言葉を反趨し乍らも、今日も亦、無為に過し勝ちな昨今です。

  最近は中国に関する書物が汗牛充棟と称するに足る程、巷に溢れて居ますが、杉森久英著「中国見たまま」は、歯に衣を着せぬ卒直な表現で中国の、我々が余り知らされてない社会の一面を赤裸々に描いて居る点で、この旅行記は五年前の文化大革命が進行中の印象記であることを念頭に於いても、尚十二分に興味ある一書であります。