七組 木村 久雄
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書不尽言、言不尽意と云う言葉があります。言いたい事を文章に書き尽すと云う事はまことに難しい事で、心に思って居る事を口で言い尽す事も亦非常に難しい事です。まして心に思って居る事をそのまま文章にするのは尚更厄介な事です。十二月クラブの事も私には仲々うまく文章に言い表わせないのですが、数多くの会と名のつくものに属し、又数多くの友人知己を持って居ても、「ヨオー」の一言で意の通じ合う十二月クラブの雰囲気に勝るものは仲々得難いと信じます。 「豆を煮るに豆がらを以て焚く。豆は釜中にあって泣く。もと之、同根より生ずるものを。」之は昔、中国の曹植と云う人 が其の兄に殺されようとした時、云った言葉で、之によって彼は許されたと云う故事がありますが、兄弟、同国人、同じ業界等同根より生じた人々が醜い争いをして居るのを見るにつけ、同じ昭和十六年十二月、一橋と云う同根から生じた吾々の付き合は、いつまでも豊かに育ててゆき度いものと思います。 昭和二十年、私が三井物産を退社して、中小企業に身を投じようと決心した時、或る先輩から、「中小企業をやれば所謂親会社をもつ場合が多かろうが、君は決してカナリヤになってはいけない。須らくスズメになる様努力すべし。カナリヤは餅と水を与えられて一つの籠の中で生きて居るがスズメは自ら外を飛び廻って自ら餌を求めて生きて居る。中小企業も親会社から すべてを与えられて一つの枠の中で生きようと考えると失敗するぞ」と云われたものです。十二月クラブにあって私はまだまだカナリヤ会員であり、まことに申訳ないのですが、どうかスズメ会員の多い発展的な、Inovationに富んだ会として末永く栄えて貰い度いと念願致します。 |