六組 矢守 勝一
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最近特に田中新内閣になってやかましいこと第一「日中国交回復」第二「日本列島改造論」第三「社会福祉特に老人問題」今一つ別格「環境公害問題」 日中問題は此の記念文集の出る頃には田中総理の北京訪問も終り、此れからが真打ちの各論の時代に入って来ると思う。飛鳥天平の古えの時代を持ち出す迄もなく日漢両民族の交渉は宿命の問題である。台湾もその一部であるが大陸との天秤では話にならない。 後の三つ国土総合開発、社会福祉、環境問題は現象面より見れば大変異った問題ではあるがその底に流れている根本思想に共通なものがある様に思う。老人を大切にし様と言う考えも公害のない工場都市、国土及び地球という願いもその元は「人間の生命尊重」という思想から出ている。 万一日本列島改造が此の根本目的を忘れて只ブルトーザーとダンプトラックで田園と丘の緑を破壊するだけに終るなら、丁度公害対策で着地濃度規制が厳しくなった為煙突を高くしてPPMを低くすることに成功したがSO2の拡散範囲が煙突の高さの二乗に比例して広がった実例を想起させる。山高ければ谷深し。その行動力の大きさに期待をかけられている角栄ブームも一つ間違うとその反動の大きさは大きい。願わくば目的と手段が転倒しないことを。 富める国の代表者であつたアメリカが貧乏国の代表みたいであった小国日本と僅か二十数年の間に地位逆転して貿易逆調通貨失調に悩むとはほんに数年前迄は世界の誰れが予想し得たであろうか。 ニクソンの特命を受けてキッシンジャーが地球の上を駆け巡っている間に突然彗星の如く現れたとうもろこし畑の他に何も無いと云われる中部平原のサウス・ダコダ州選出の一田舎議員のマクガバンが大先輩の民主党長老のハンフリーとかマスキーを蹴落して同党の大統領候補の指名を獲得してしまった。彼の綱領の第一はベトナム戦争の無条件即時停止である。然も彼の「選挙運動の運動員は従来の各地の政治ボスでなくて今迄無気力無関心と自他共に決めていた一万五千人のヒッピー青年に依る。手弁当の「草の根運動」であり、此れが既成政治家の既成組織を打ち破って今迄の常識をひっくりかえしてしまったのである。 来る十一月七日の全国投票でニクソンを破りアメリカ合衆国第三十八代大統領なるかどうかは未知のものである。 然しニクソンとしても再度大統領の地位を保持する為には政敵の反戦思想を先取りしてベトナムに再度大決意を示す他はないであろうと言われている。 マクガバンの政策には四十年前のニュー・ディール以上の革新的な経済政策、特に所得配分政策に実行不可能と思われる様な急進的なものが見受けられる。然しそれ以上に吾々に関心が深いのは第二次大戦の爆撃機隊長としての人生体験からアメリカの威信を保つ為にベトナムの無辜民に爆弾を落して徒に人命を殺傷することに関し彼が田舎牧師の子として育った深い良心の痛みを感じて即時爆撃停止を叫んでいることにある。 病める大国の更生に果してキッシンジャー流のパウワー・ポリティック丈けで成功するか。此れからの見物である。 話は変りますが厚生省発表の昭和四六年度簡易生命表によると日本人の平均寿命は左の通りである。 男 七〇・一七才 女 七五・五入才 ついでに同表を見ると、五五才平均余命 男 二〇・四四年 女 二四・二五年 右の数字はスエーデン、デンマーク、ノルウェー等の世界最長寿の北欧国に準じて居り昭和五十年後三年で此れも抜いて、確実に最長寿国になるそうです。 有吉佐和子の「恍惚の人」がベストセラーとして洛陽の市価を高からしめている(?)そうですが、だからといって日本が俄に英国やフランス並みの老齢国にはならないそうで、統計家によると十五才から四十五才迄の再生産年令人口の比率は六十五パーセントもあるが、世界の文明国は概ね五十パーセントを切っているそうです。アメリカ並みになるには二十年位先で英国並みになるには半世紀以上先きだそうです。未だ未だ日本は青壮年国が続くことは確実で環境汚染を完全に防除することに成功するという前提に立つと西暦二千四十年頃総人口一億四千万人位がピークになってそれから漸次減少に向うそうで、此の制約条件になるものは食糧も公害でも人口過密による精神的ストレスでもなくて石炭、石油とかLNG等の有限天然地下資源に依存するエネルギーの限界であろうと言われているそうです。 核分裂に依存する原子力発電なら半永久的にエネルギーを取り出せる訳だが放射能による汚染が完全に解決していず一つ間違うと地球上の生物の全滅の危険があり、結局大々的には使えないだろうということです。 BHC・DDTの農薬の汚染或は本年製造中止になったPCBの影響が出なくなるには約十年、完全に心配のなくなるには二十年掛るそうです。 マスキー法により自動車排気ガス規制が強化されるのは一九七五年乃至七六年として旧型車が殆んどなくなるに五年乃至七年は掛ることが予想される。電気代も自動車や各種商品の価格は社会的健康代、安全代をコストに算入して高くなって行くであろうが、ミクロの不経済もマクロの経済的有利性に吸収され国民の健康、長命、子孫の繁栄と言う何物にも代えられない利益となって返って来ることは確実である。 |