四組 鈴木 義彦
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卒業以来早や三拾年の歳月が流れた。顧みれば我々の学生時代には華やかな青春などはなかった。予科の時代は未だそれ程ではなかったが年と共に軍国主義の風潮が昂まって行き、ついに太平洋戦争の勃発となり卒業は繰り上げられて我々は否応なくペンを剣に持ちかえ祖国の難に赴くべく慌しく学窓を去ったのであった。 やがて平和の快復と共に悪運(?)強き我らが仲間は次々に無事帰還し、社会の第一線に復帰して夫々目覚ましい活躍を続けて来た結果、今や各職域に於ける責任者として日本経済を動かす原動力となっていると云っても過言ではなかろう。 日本の経済が高度成長の結果今やGNP第二位の大国となり、こゝらでもう一度内外に亘る諸方策を再検討する必要がある様に、我々自身もこれ迄唯ガムシャラに働いて来た感のある生活態度を反省し、この辺で今後の生活設計について深く考えて見ることが必要と思う。 十二月クラブの記念文集への執筆はこの様な思考のきっかけを与えてくれた。それにつけても運命の織りなす悲しきあやとは云え既にして幽明境を異にする仲間も可成り多い。特に卒業早々にして戦場に散った同学の人々に思いをいたすと改めて心から冥福を祈らずにはいられない。あれこれ思い巡らして今後の生活をより充実した巾の広いものにして行き度いと思う次第である。 |