片柳 梁太郎
|
||
この文集は私達の卒業三十周年を記念して十二月クラブの会員諸兄が書き綴ったものを集録したものである。私達の卒業した昭和十六年の十二月は、あたかも太平洋戦争が勃発したであり、そのためわれわれは始めての三ケ月繰上卒業によりあわただしく学窓を去っていったのであった。 大部分の学友は、実社会の世界を垣間見る程度で、間もなく軍服を着る身となり、多くの者は大陸に、南方に、また海戦に征って行き、そして幾人かの学友は遂に還らなかった。 幸いこの戦争を生き抜いた者も、戦後の激しい動乱の時代をくぐり、私共の先輩達が経験しなかった道を辿って来た。その間、更に幾人かは病に仆れ、或は悲しい事故のために不帰の人となった。 今や三十年後の今日、会員の半数は停年とか、転職とか、いわば又一つの人生航路の曲り角にさしかかっている。 卒業二十五周年記念事業としては、立派なアルバムを作成したが、三十周年の記念事業として、丁度われわれがさしかかったこのような時点に足を踏まえ、過ぎ去った日の事ども、旧友の想い出、家庭や自分の現況、或は現在の心境等について各自が一文をしたため文集としてまとめて見ようということになって出来上ったのがこの文集である。 実は、昨年十二月の記念大会に配本する筈で出発したが、余りに寄稿者が少くて一年繰延べになったのはわれわれ委員一同の怠慢によるものであるが、幸い本年夏頃より俄然投稿者が増え、予定人員に近付いた事と、一つ一つの文章には会員それぞれの思いがこめられており力作が多い事とで遜色は全くないと云えると思う。寄稿者に厚く御礼申上げる。 この文集をまとめることによって卒業三十周年の記念に一応の区切りをつけ、これを一里塚として これからの人生の新らしい門出としたいと思う。 終りに文集編集にあたり、忙しい時間を割いて並々ならぬご苦労をお掛けした鈴木栄喜君並びに幹事長坂田建樹君の両君に感謝の意を表したい。 卒業三十周年記念事業準備委員長 片柳 梁太郎 昭和四十七年十月 |