水 泳
街行く人のオーバーが
そしてショールが未だ取れぬ
四月中旬我等のシ一ズンは始まる。
友の紫色の唇を見ては
何くそと飛込む
あの気持を一生忘れ度くないものだ。
 ニケ月、三ケ月の練習が
一分・三分・六分の間に審判を下される。
 それは厳しいが故に
悲しい迄に尊い。
そして此の厳しさに揉まれる間に、
泳ぎが水に乗ったあの瞬間の、
恰も立体世界へ入った様な
醍醐味が感ぜられる。
 
そして苦しさ楽しさを超へた底に
尚断ち切れぬ水への愛着、
それは六年間を
水と苦しんだ者にのみ
許された特権である。
勝てば官軍、
負ければ賊軍の掟に従ひつゝ
戦って来た吾々ではあるが、
尚六年の回顧は
上述の様な悦びと安堵を齎す。
班長
古川栄一助教授
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--卒業生--
石井重嗣 牧原志郎 村上弥壽夫 福間誠
一森明 黒川忠嘉 柴田信一 吉村栄喜
牧野知久 岩波薫



一、、、