1組 木島 利夫 |
記念文集に何か一文をと気になっていました。 ご多分に洩れず、青春の一時期、文学を一生の仕事にしたいと大まじめに考えたことがあった。書棚に、アダムスミスやケインズと並んで文学書や哲学書がぎっしりとつまっていた。下宿が二階だったので、本の重量のことで、下宿のおばさんにしばしば、文句を云われたことを覚えている。 こうした思い出多い蔵書とも、ある日お別れせざるをえなくたった。戦争勃発、繰上卒業、入営が迫ってきたからである。昭和十七年一月のある寒い日、近くの古本屋を呼んできて、一切の蔵書を文字通り十ぱ一カラゲに、売り払うことになる。これで自分の人生の区切がついたと思うと、サバサバした気持にもなったが、同時に何ともやり切れないむなしさに、涙をおさえることが出来なかった。 当時、私が愛唱していたのは、雑誌「四季」の同人の作品であった。そのころ、四季の連中は、日本の近代詩の担い手として、意気軒高たるものがあった。 太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ。 田舎の夜半、灯が遠く近く見えているところへ雪がしんしんと降っている。 |
卒業25周年記念アルバムより |