5組 韮澤 嘉雄 |
このたび、卒業四十周年を迎えるに当り、十二月クラブ会員諸兄に記念特別募金を御願いいたしましたところ、応募会員百九十八名、応募金額六百九十二万円(十月三十一日現在)に達しました。これは募金目標額五百万円を三六%も上回る驚異的な成績でありまして、会員諸兄の熱誠溢れる十二月クラブ愛に、ただただ感激のほかはありません。どなたも、いろいろ御事情がおありの中を、本当によく御協力下さいました。奥様方もよく御理解をお示し下さいました。いまさらながら、十二月クラブの連帯感、団結の強さに深い感銘を覚えております。 お蔭様で、この素晴らしい記念文集『波濤』の発行はじめ卒業四十周年記念事業を次ぎ次ぎに立派に進めていくことができます。この募金を言い出し、みずから募金委員長を買って出た者といたしま上)て、募金委員の方々はじめ会員諸兄に、御送金頂きました際にも御礼申し上げましたが、さらにこの機会をかりてもう一度衷心より感謝いたします。 ところで、今回の募金のこのような好成績は、別の角度から見れば、会員諸兄の大部分の方々が六十の坂を越えたこんにちにおいてもなお健康で元気に働いておられることを物語っております。そうでなければ、いくら十二月クラブ愛が強くても、これだけのお金は集まらないでしょう。これは実に嬉れしいことでして、この状態がいつまでも続くのを願うこと切なるものがあります。 しかし、人の世には定めがあります。いつまで働いていられるかということになりますと、そこにはおのずから限度があります。健康の方は各人の努力などによって百歳までも元気でいられるかもしれませんが、仕事の方はオーナー経営者でもない限り、いずれ五、六年から十年以内には引退しなければなりません。 そしてそのとき、「元気ではあるが仕事がない」という老人問題、高齢化社会問題にいやでも直面しなければならなくなります。実はこれこそ、医学の進歩、医学知識の普及、栄養の向上などによって人間の寿命が大幅に延び、「人生五十年」ではなく「人生八十年時代」になった現代社会の大問題の一つなのでして、これにどう対処するかは、こんにちの世界における最大の課題の一つであると言っても過言ではありません。国連にも老人問題委員会が設けられており、来年の秋にはウィーンで国連主催の「国際老年会議」が開かれることになっています。 賢明な十二月クラブ会員諸兄は、もちろん、この問題に早くから着目しておられることと思いますが、その点、十二月クラブを持っていることはわれわれの大きな幸福だと私は思います。といいますのは、十二月クラブは高齢化社会問題に対応する恰好な場になるからです。仕事がなくなり、家にいると"粗大ゴミ"(不用になったが、はいて捨てるには大き過ぎる夫のことだそうです)と厄介者扱いにされるので、昼間はどこかへ出ていかねばならぬ将来のわれわれを、あたたかく迎え、抱いてくれるのは十二月クラブです。そこには生きてきた時代を共にし、母校と教養を同じくし、利害ではなく、純粋な友情と青春の思い出によって結ばれている友が大勢います。それらの友と語り合うことによって、また奥様方もそれにジョインされることによって、人生が灰色ではなくバラ色になります。 幸いにして、わが十二月クラブは、会員諸兄の熱意と努力によって、如水会の、いや全国の大学の同期生会の中でも、最も組織化され、最も資金も豊富で、最も活発な活動を続けています。この美事な文集がそのことを何よりも雄弁に物語っています。 しかも、もう一つ幸いなことに、来年の十月一日には新如水会館がオープンします。そして皇居を見おろせる、眺望のいい最上階の十四階には、ソファーの置いてある談話室、バー、碁将棋・麻雀室、図書室などを持った如水会員専用のクラブルーム(奥様、御家族ら同伴者は利用できます)が設けられますし、一、二、三階には会議室、宴会場なども数多くできます。 その真新しい、快適な如水会館を舞台に、これまでも日本一活発な十二月クラブの活動をさらに一段と活発にくりひろげ、奥様ともども若返るならば、われわれ十二月クラブ会員の前途は"粗大ゴミ"ではなく、洋々たるものがあるでしょう。その意味においては、十二月クラブは、これまでにすでに大きな使命を果しつつありますが、その本領を発揮するのは、つまり十二月クラブの本番はこれからだと言うことができます。 こうした十二月クラブの、これからの、新たな重要な存在意義に改めてもう一度思いをいたし、皆で助け合い、励まし合い、慰め合い、いいアイディア、智恵を出し合い、力を合わせて十二月クラブをさらに一段と盛んにしていこうではありませんか。それが私たちひとりひとりのこれからの人生の幸福につながっているのです。 |
卒業25周年記念アルバムより |