6組  石井 重嗣

 

 何か珍らしいことでもと、思い付いたのが「操数而楽(そうすうじらく)」であります。この言葉には皆様多分、馴染がないと思います。それもその筈、私が独りで考え付き、余り参考となる本もなく、独りで楽しみ乍ら、全く退屈することなく、又、一切他人の迷惑になることもなく、論理性の追求と頭の老化現象を防止することが出来ると、私が信ずるものだからであります。「操」はミサオではなく、うまくアヤツルということであり、「数」は権謀術数という大それたものでなく、単に数字のことであります。「楽」は少々大それていまして、論語雍也篇に「知之者不如好之者、好之者不如楽之者」の楽であります。即ち、数をうまく操って楽しい思いをし乍ら、多数の自称「偉作」をものにして、自分独りで勝手に随分上達したものだなあと思い込んでいる心境のことであります。

 「数を操りて楽し」なんて申し上げたら、恐らく冗談じゃない。朝から晩まで、数字数字と追い廻わされ、やれ辻棲が合わない、この数字では決算が出来るとか出来ないとか一喜一憂している身にとっては、数字はもう沢山!せめて一時でも数から解放されたいものだ!それともドレッシングの名案のことなのか!と反問されるかも知れません。

 まあお待ち下さい。それは数を操っているのではなく、数に操られているのですよ。

数にあけ 数に暮れる 我身には
    数を操る 楽しみを知る

 数の神秘さ、秩序良さ、面白さのあまり、独りで悦に入って、句にもならぬ句をものにしていては誠に申訳ないとばかりにこの一文を披瀝するに至っては病膏肓の謗りは免れないものと覚悟致しておる次第であります。

 前置きのタワゴトはこの位にして早速本文に入らせて頂きます。

 1. ルール

 ある回形の中にある全部の数について
 (1) 1,2,3……Nの自然数を1回限り全部使用すること
 (2) 図形(方陣、円陣、扇形陣、等々)の同一直線上及び同一円周上(同一円弧上を含む)の数の合計値(以下定和という)を同じにすること。
 
 ルールはそれだけの極めて簡単なもので,その典型は魔方陣ですが,何も方陣に限りませんので、しいて云えば魔法陣とでも云っておきましょう。
 皆様は恐らく,なあんだくどくど云ったけれど「数字パズルの頭の体操」かと云われるかも知れませんが,そうです。逆らいません。

 2. 教訓

作り方,解き方を進めて行くと,社会生活にとって為になることが多いのに気が付きます。
 (1) 数は融通性がなく,ルールに忠実でないと全然進まず,答が出来ません。
 (2) 結果が正しいか否か明確です。
 (3) 無暗矢鱈に答を急いでも効果は薄い。
 (4) 論理性で範囲を狭めてから。可能性必要条件を見出して,消去法,試行錯誤をする。
 (5) その際,推理と直観が必要である。
 (6) 複雑な問題は「困難を分割せよ」。一見複雑,困難と思われる問題でも,よくよく分析してみると,簡単な自明の事の組み合わせであることが多い。(デカルト)
 (7) 自然数であるので,そこに自ら秩序,調和連続,左右対称が重んぜられることが多い。
 (8) 中心からの等距離にある点(円周はなくても)の性質を考えること。
 (9) 数であるので,初め,中央,終りに注意すること。
(10) きれいな形(スマートな形)の解答が望ましい。秩序が解答の鍵となることあり。出来上りの「美しさ=美度は複雑さに反比例し,秩序に正比例する」という言葉あり。

【編纂者よりのお詫び】
 以下は画像として集録した関係で、不鮮明です。筆者及び読者の方々に深くお詫びします。
 本文は如水会館14階、図書室(東京都千代田区)の「12月クラブ40周年記念文集(波涛)」に集録されてあります。ご興味ある方はご参照下さいますよう、お願いします。

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 

  



卒業25周年記念アルバムより