7組  坂本  保

 

 折角の機会ゆえ何か一筆と思いますがさて何から書けばよいかしら?
 私なりのいろいろな紆余曲折を経て戦争という人生の与件のおかげで何となく故郷下関の地に住みついて既に三十三年。今は米麦を中心とした食糧卸の会社経営に当たっている。

 日本経済は世界の優等生と云われているがその経済力とか国民経済のチエの基礎的条件の一つには食糧の安定……主食の安定があったということは正にうっかりすると見落され易いのではないか? 例えば昭和四十八年の第一次石油ショックの時、油や紙や種々な物資の買い占め騒動が起ったが食糧問題では騒ぎはなかった。主食たる米の流れが食糧管理行政の下で一応一定の秩序が保たれていたからだと我々業界では心ある人は云っている。
 ところがその食管法が今回改正された。新法は明年一月から実施される。それは過剰の時は緩和した制度として作用し、凶作、輸入杜絶等一朝有事の際は配給時代に戻るという弾力性のある食管法になったということだ。併し当面は米消費減退の中で過剰状態が続くと思われる。そこで通帳なき食管の時代の到来で(びっくりされるだろうが従来は法律上購入券なくして売買することは違法だった)これは販売業者にとっては大変革の時代へ突入したことを意味する。

 ということで今や今後の商売をどう舵取りしてゆくか腐心しているところです。

 歳月の流れは早いもので戦後だけでもあっという間に三十六年。人生八十年と云っても残されたぺージはあと何ぺージかなあ。八十%の道程を通過してしまった。いろいろな事があった。いすかの嘴の食い違いでがつがつすることばかり多かったが併し大した事はない。人生まあこんなものだ。人間って奴、独りよがり丈けではどうやら満足出来ないものだ。どんなに自己嫌悪に陥ろうと自己否定をしようと現実の自分を実力以上に昇華させることは出来ない。もうあとがない。剣が峰だ。その現実を見すえて、これから先の歳月をもっと充実させてシナリオのクライマックスを生き抜きたいものと思っています。今も年に五回は麹町の全糧連に出かけますが、新如水会館では是非在京諸兄との懇親会で旧交を温めたいものと願って居ります。

 


卒業25周年記念アルバムより