7組  中村  豊

 

 今から十年前ニューヨークより商船三井の大阪支店長に転任して以来、総会屋との関わりが始まった。
 商船三井の登記上の本社は大阪であり、定時株主総会は大阪で開催することに取決められている。現在は一年決算で株主総会は年一回であるが、以前は半期毎に総会があって、総会の一、二ヶ月前頃より、その準備に忙殺されるのが通例であった。倶梨加羅紋々やバーテン上りの者もいるが、訪ねて来た人が誰とどの様な関連があるのか、単なる小遣い稼ぎたのかどうか、判断に相当悩まされたものである。服装、態度・言葉遣いなどでは、所謂総会屋という範疇に入らないと思われる人達も多い。

 現在勤務している日本海汽船は、昭和十四年十二月に、本州・北海道/朝鮮・ウラジオストック間の航路を営んでいた北日本汽船ほか二社が合併して設立された会社であって、戦後は日本海とは縁が無くなり、北米・中近東・インドネシア・中華人民共和国等との間の不定期船運航を主としている会社である。資本金十億円、年商一一二億円の中小企業であるが、東証第二部上場会社にて、二八五万株前後が個人株主の所有となっている。

 社長となる様にと申渡されて、最初に気になったのが株主総会であり、社外から出席する株主さんのことであった。

 A氏は当社の株主総会の世話人的役割を行っている御仁であるが、会って見ると温厚な人柄で、紙上で記事にされている総会屋とは全くイメージが異っている。
 聞く処によると、当社設立当時のN社長が、彼を見込んで株式を幾何か渡し、必要の際会社業務を外部から援助することを申し付けたのが発端ということである。

 今日程組織を重視せず、社長ほか一/二の役員により経営が行われていた時代の、社長の情報源として重要な役目をしていたのではないかと思われる。
 現在情報化社会といわれ巷に情報が氾濫しているが、経済関係で紙上に現われるのは、事柄が或程度進行し、或は決定の後に表面化することが多い。他社に先がけ或いは遅れを取らずに、意志決定が出来るような情報を吾々は必要としている。
 従ってA氏のように、吾々の日常業務とは直接関係ない方面からの色々の話は、極めて参考になることが多い。

 本年も株主総会が近づいてきた。総会の世話人A氏によって、紙上を賑わしているような輩の出入を断り、真の株主諸氏の出席を得て総会が無事に終るようにと念願している。

 


卒業25周年記念アルバムより