(一) |
故郷の春は雲遠く タベ空行く鳥に問へ
都塵遥けき小平の 命の森よ青ければ
君よ来りて共に泣け 友よ集ひていざ汲まん
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(二) |
三寮の友声もなく 弦月窓に懸る時
花の床をば抜けいでし 頬(ほほ)紅の若人は
緑蕪(りょくぶ)の果に逍遥ひて 今宵も独り涙しぬ
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(三) |
春アルペンの花を恋ひ 秋凋落の色に咽く
多感の友よ想はずや 多恨の朋よ愁へずや
祖国の姿今如何に 母黌(ぼこう)の姿今如何に
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(四) |
ユーフラテスやチグリスの 河辺に生ひしバビロンの
文華一度散り腐ちて 乾坤めぐる幾春秋
見よ東方に光あり燦爛(さんらん)として輝くを
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(五) |
尾羽を試す荒鷲は 彼の崑崙の峰に翔ぶ
図南(となん)の翼収めては 武蔵の森の葉蔭れに
鳳雛(ほうすう)夢む三星霜 翔天の機(とき)は来らずや
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(六) |
自由の駒に跨りて 弓手に翳す自治の旅
風雲狂ふ巌頭に 裸身鉄鎖に繋(つなが)るる
プロミシアスの勇あれど 噫戈無きを如何せん
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(七) |
軍鼓一度高鳴れば 友来りて戈を執れ
今にし我等立たずんば 地土の闇にさ迷へる
運命の子よ人の子よ 四億の民を如何にせん
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(八) |
レモン花咲く南欧に 胡馬風に嘯(な)く漠北に
幾世の浪に揉まれつつ 立てし操のマーキュリー
今東海の雲霽(は)れて 筑波颪(おろし)は馨るなり |