序

  一橋歌集に寄せて
                           応援部々長    長 澤 惟 恭

 応援歌、寮歌が学園生活にとって欠くことのできないものであることは、誰しも異存のないところであろう。本を読み、ものを考えることは孤独でもできることかもしれないが、学生生活の大切な目的の一つは、そこで心の友をえ、そこで、青春のある一時期に若人の集りの中におのずから培われて行く豊かな感情の高まりに、自分の身を浸してみることでなければならない。学生歌は、それを歌うことによって、各人がこの感情の高まりを互いに伝えあい、自らをこの共感のうちへと誘なうと同時に、お互いの心の窓を開け合っておくという、友情にとって最も大切な誓いを確めあう手段でもあろう。
 それは又、先に行くものと後に続くものとを結ぷ親愛の絆でもあるであろう。わたくし達は、自分達の時代に作られそして愛唱された寮歌が、それから後その時代々々特有のテソポで、つぎつぎと歌いつがれて行ったことを知っている。ある時代には、同じその歌がゆっくりと哀調に満ちて、また他の時代には早い軽快な調子で歌いつがれていったことを。
 わたくした達は、それぞれの時期に作られたわたくし達の歌を、正確に知っておきたいと思う。しかしそれと同時に、このようなそれぞれの時代の同人達によるそれぞれ独特な歌い方を、それで良いのだと思う。先輩達が残していった歌を、自分達の時代に特有な感情をこめて歌い上げることによって、わたし達は自分自身が、一橋という縦と横とに拡がりをもった感情生活の場にあることをひしひしと感ずることができるからである。
 こんど応援部の努力によって、この集大成された一橋の歌集ができ上ったことを喜ぶとともに、これがすべての一橋人達によって歌いつがれ、一橋を結集する絆になればと思うのである。