大学及び学生のあり方についてごく日常的な側面から見て、一言意見を申し述べたい。
私は一橋に入ってから卒業までの六年間、極端な言い方をすれば陸上ホッケーばかりやって来たわけで、学問とスポーツを両立させることは極めて困難なことだと自分なりに痛感しているが、私自身としては青春時代をスポーツに打ちこんで来たことに何の後悔もない。当時としては伝統あるホッケー部の名誉を守るべく必死に努力して来たということになろうか?スポーツとはいえ、やる以上はやはり勝たねばならない。そのために激しい練習に明け暮れしたものだ。
ところで最近の母校の運動部はどちらかというと同好会的存在と化していると聞くが、何か確乎たる目的意識に欠けているのではないかと懸念される。
新聞のスポーツ欄に母校の名前が載ることはごく稀で、しかも勝ったという記事にはほとんどお目にかかったことがない。
私は何も勝つことがすべてとは言わない。又母校の運動部の連中が少しも努力していないと言うつもりはないが、やる以上は中途半端な割り切り方をしないで、もっともっと頑張って欲しいと思う。
次に学生の就職状況を見るといつも感じることだが、学生の大企業指向は或る程度理解するとしても大部分が給与条件の良い一流の銀行、商社等の第三次産業に集中し、メーカー或いは中堅企業等に入る者が極端に少ないのはどういうわけか?そして卒業生の数の少ない母校の学生が一社に二十人、三十人ど入社しているが、彼等は一体どういうつもりなのか?
キャプテンオブインダストリーの精神からいえばもっともっと広い分野に進出して大いに活躍して貰いたいと思う。
学校当局も常日頃からこの点を念頭において学生を指導教育して貰いたいと思うし、又同時にもっともっと個性のある人材が育って欲しいものだと思う。
国立大学の中で昭和天皇ご逝去に際し弔旗を掲げなかったのはわが一橋大学のみという。しかもそれが学生の反対で不可能となったというから呆れて物も言えない。
そもそも学生のはき違えた自由主義も以ての外であるが、大学の自治とか、民主的な運営、管理とか称して独り善がりのやり方をする大学当局の姿勢も厳しく問わるべきであると思う。まして学長の選出に当って学生に過大な権限を与えるなど全く理解に苦しむところであり、大学当局の猛省を促したい。
いずれにしても一橋大学が学問の殿堂としての権威と名誉を確立することはもとより大切なことであるが、人材の育成面でももっと的確な指導理念を以て臨んで貰いたいと思う。
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