1組故金子庄一郎妻 金子 基子

 

 十二月クラブの皆々様、御卒業五十周年おめでとうございます。
 人此の世に生を得し時、すでに天寿は定まってとは承っておりますものの、主人ももう十年生き永らえまして、共にお祝の日を迎えられましたらと、儚い繰り言が脳裏を掠めます今日此の頃でございます。

 故人、生前は校友関係の事をあまり話しませず、私も迂闊に失礼を致しておりましたのに、没後いつも皆様から厚い御懇情を頂きまして、あまりの御至情に感激致し、何とよき友人方に恵まれ、また幸せな人生を過ごした人でございました事かと、しみじみ感じております。

 故人は非常に家庭を愛しました人で、二人の子供の幼少時代は、休日毎に動物園へ遊園地へ植物園へと、又、成長致しましてからは旅行や食べ歩きにと、家族揃っての行動を楽しみました。一本気な江戸っ子とでも申しましょうか、思いつきました事を誰方にでもぽんぼん申してしまい、イエス、バット式の会話の誠に下手な性格でございましたが、それは短所でもあり、又考えようによりましては長所でもあったと、私は思っております。

 全てを依存致しておりました私にとりまして、大きな存在を失いました直後は何も手につかぬ有様でございましたが、長男のニューヨークヘの転勤、結婚、長女夫妻のロサンゼルスヘの留学等と、十年の歳月は忽ち過ぎ去りまして、只今は両家族とも帰国致し、皆様の御温情のもと安らかな日々を過ごしております。恵まれました三人の孫を、子煩悩の主人はさぞ可愛がりました事と、一目でも見せたかったと存じ、それのみは残念でございます。

 どうぞ皆様、御健康に御留意の上御長命遊ばしますよう願っております。