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1組 河村 友三 |
銀行に三十一年、信販会社に十五年勤務し、七十才で現役を退いて今は信販会社とリース会社の非常勤役員をしてゐる。両社とも社長は主力銀行出身で、信頼できる人なので、嘴を入れないことにしてゐる。趣味としてゴルフ、囲碁を週一回仲間とやってゐる程度だが、家内がリュウマチによる重度の身障者なので、その世話に手が掛かり日常退屈することはない。 悪名高いノンバンク業界に係わってゐるので、私の関係する会社を説明すると、両社は何れも三、四十年の永い歴史があり、本業を地道にやり堅実経営を貫き、不動産や株式投機に余り融資してゐないので、バブル経済崩壊による損害は軽微である。もっとも株価下落の影響はあるが、これは持合いの銀行株が値下りしたためで、保有株式の含み益は大幅に減少した。 これが大方のノンバンクの姿であろうが、一部に暴走して大きな損害を出して銀行の全面的庇護を受けたり、倒産するところが出たのは誠に残念だ。規制が近く強化される様だが、当然のことで寧ろ遅きに失したと思う。 このところイトマン鰍フ記事をよく見るが、約三十年前に大阪で銀行勤務した頃伊藤万鰍ニ取引があった。同社の銀行取引は住友が圧倒的主力で準主力はなく、他は全く低位という変な状況であった。当時アノテの繊維商社は概して業績不振であり、体質改善をはかり脱繊維化を進めてゐた。伊藤万鰍烽「ろいろ努力をしたが結局経営不振に陥り、銀行の全面的支援をうける破目になり、社長も銀行から派遣された。その後多角化が進み、体質改善が成り、立ち直りに成功したかに見えたのであるが、サラ金に多額の融資をしてゐたとの心配な噂もあった。船場の問屋にはガメつい商売をする一方で、家訓とか一日一善の標語を毎朝おさらいしたり、道徳科学を熱心に勉強したりして、商道に反してゐないかと絶えず反省する風潮があった。伊藤万鰍ヘ企業の公共性を忘れ、社憲を蔑ろにして浮利を追い虚業に走ったのであろう。そして今日の事態に立ち至ったのである。勿論これに絡んだ金融機関の失態も大きい。 地価高騰の悪影響は極めて大である。最近の世論調査によると、若い人の勤労意慾がそのため低下してゐるとのことであるが、これは由々しきことである。これは政策の施策の拙さによるが、金融機関(ノンバンクを含め)のバブル経済助長の責任も亦重い。 今後地価下落のためいろいろ施策が打たれると思うが、金融機関はこれに協力し信用機関としての信頼性を維持して貰いたい。 |