2組  松田  緝

 

 研究室への階段を上るにも息切れがして、身体も大分ガタが来たので、この夏休みは最後の欧州旅行に出かけようと思う。目的は、鵞鳥の鳴き声が執務の妨げとなるとして放し飼いの禁令を出した、面白い市長が居た町を訪れるといった、他愛のないものである。それでも中世の面影を留める小さな古い町で、息を呑んで立ち止まるような街並のたたずまいに会えたら、もっけの幸いと考えている。

 此の頃は、俺の一生は何だったろうなどと、妙なことを思う。遠々呼雲、蓋世匹夫。

瘋癩がドイツくんだり老いの旅

冥途への土産求めてこの夏はうろつきまわるドイツ三界

 諸兄の御健勝を祈ります。