一九一八年九月三日、私は満州国奉天省三江口という寒村に生まれた。それから七二回の誕生日を迎えたが、今までこれといって記憶に残るような誕生日はなかった。

　五九才の誕生日、即ち一九七七年(昭和五二年)九月三日夜の事、巨人対ヤクルトのナイター野球中継で、読売ジャイアンツの王選手は、三回裏一死後、鈴木康二郎投手が2ー3から投げた球を見事に打ち、白球はライトスタンドに吸い込まれ、ハンクアーロンの世界記録を破り、ホームラン世界新記録七五六号が達成されたのである。

　王貞治は、一九四〇年(昭和一五年・紀元二六〇〇年)五月一一日に生まれている。さて、それ以来七五六という数字が忘れられないものとなったが、もう一度この数字に出会うことになる。

　一九九〇年(平成二年)一月二一日(日)初場所千秋楽で、横綱千代富士が、幕内七五六勝を達成し、三〇回目の優勝に花を添えたのである。