3組  田中 林蔵

 

 学窓を出て以来約五十年に亘って全力投球を続け、その間幸にして健康と幸運にも恵まれ今日に至った次第であるが、これからは終着点に向けて静かに歩むことになる。

 そして今まで如何に幸福に過ごして来たとしても、終着点間際になって惨めであったのでは、結局は不幸な生涯であったということになって了うので、これからの生きざまは、余生とは言え私達個人にとっては今まで以上に大切なものであると言えると思う。

 私達は今や社会的には全く無価値な存在であるばかりでなく、時には粗大ゴミとさえ言われる立場にある。そうした中で確実に言えることは、私自身は家内にとって今まで以上に大切な存在であるであろうし、また家内も私にとっては今まで以上に大切な存在であるということである。と言う訳で、これからは二人が協力し合い、手を携えて余生を全うすると言うことにしたいものだと思っている。

 ではこれからどうするかと言うことになる訳だが、世の為人の為にと言うようなことは今までにやるべきことで今更という気がする。生き甲斐と言う問題は若く元気一杯の時代のことで、今となっては生に対する執着を全く失わない限り考える必要はない。

 私の場合ゴルフ、麻雀、剣道、庭仕事と言うことで現在比較的忙しい日々を送っているが、矢張り目標のない生活は空虚である。と言って立派な目標となると目標を探すこと自体煩わしく、また大きな目標は却って負担になって了う。彼是考えると、取敢えずは手近な、小さな目標と言う程度のことが現在の私達にふさわしいことのように思える。そして最後に「楽しかったね」と笑顔で死を迎えることが出来れば最高である。

 併し物事はそううまく行くとは限らない。と言うのはこれからの生活は今までのそれとは質的に異なるであろうばかりでなく、如何なる困難が何時やってくるか全く予測もつかないので、同じ問題を抱える十二月クラブの皆さんのお知恵と御協力を得たいものと此の機会に切にお願いする次第です。