兎の数の数え方は何故「羽(わ)か?
                             7組 佐田健造
 
私が小学校(滋賀県蒲生郡八幡町一現、近江八幡市)の一たしか2年生の頃、それも算術の授業時間と思います。

先生(女性)が「今日は物(もの)を数える単位の勉強をしましょう。
たとえば、本とか、筆記帳(ノート)は1冊、2 冊、と数えます。鉛筆は1本、2本、と数えます。
人間は1人(ひとり)、2人(ふたり)と数えます。
虫は1匹(いっぴき)、2匹(にひき)。
鳥は1羽(いちわ)、2羽(にわ)、獣は、牛や馬のように比較的大きなものは、1頭(いっとう)、2頭(にとう)とも言いますが、犬や猫のようなものは1匹(いっぴき)、 2匹(にひき)と数えます。

ただし兎だけは鳥と同様に1羽(いちわ)、2羽(にわ)と数えます。

その理由は、先生は兎の肉を食べたことはないのですが、兎の肉は鶏肉(かしわ)と味がよく似ているからだそうです」と教えられました。
 
放課後、自宅へ帰って母にその話をしたら、母からさらにくわしいつぎの様な話を聞かされました。
「兎を鳥のように、一羽(いちわ)二羽(にわ)と数える理由の一つは、勿論、先生の教えられた通り、兎の肉が鶏の味とよく似ているからだが、もう一つの別の理由がある。
実は明治維新以前は仏教の影響で、日本人は動物の肉は魚や鳥(鶏とか鴨)は食べるが、四つ足(獣)は一切食べなかった。ところが、兎は四つ足でも肉の味が鶏肉とよく似ていて美味なので、ひそかに隠れて食べる者がいた。
兎は四つ足であるが、他の獣の様に、前足、後足を左右交互に動かさず、左右を揃えてピョンピョンとはねるように
歩くのが小鳥に似ている。いっそのこと兎を鳥のように取り扱えば、こっそり隠れて食べなくてもよい、と考える者がいて、兎を数える単位を1羽(いちわ)、2羽(にわ)と云う様になったらしい」との母の話であった。

明治時代になって、欧米人が日本にやって来て牛肉や豚肉を食べることが知られた。
日本人もその真似をして食べるようになった。私の母が子供の頃は、牛肉のすき焼を食べる時は、仏壇の仏様やご先祖の霊にご遠慮して、家族一同庭に出て茣蓙(ござ)を敷いてその上で食事した由である。

以上が私の記憶で、兎を鳥と同様に一羽二羽と数える理由です。
約80年近く昔の子供の頃の記憶なので自信はありませんし、真偽の程も解りませんが、ご参考になればと筆をとりました。