如水会ゝ報 平成十九年(2007)11月 第929号 p16 [母校を思う]
母校を思う
四大学連合の
OB提携機関を
飯島 満
(昭30経)
当初は五大学連合として大々的に取り上げられた構想から
早や十年弱が過ぎようとしている。
二〇〇一年三月に
一橋大学、東京工業大学、東京医科歯科大学、東京外因語大学の四大学連合
として結実した提携は、
関係者の間では知られているものの、
世間ではいまや忘れ去られようとしている。
この辺でもう一度世間の目を引きつけて、
そのインパクトを改めて呼び起こすことが必要ではなかろうか。
連合の意義を再確認
一橋は社会科学の殿堂として
学生数は少ないにもかかわらず
幾多の人材を輩出し、
日本の発展に寄与してきた。
しかし、単独ではマイノリティーの限界を突破するのは難しい。
その打開策として選んだ連合の形こそ、
二十一世紀においてアジアの、そして世界の一流大学に列する
賢明な選択であったと
私は確信している。
東大や京大のような既存の総合大学を目指しても、
その時点では格好はよいが、
しょせん二の次のまねごとに過ぎないので、
先発校を追い越すのは無理であろう。
現代は社会活動や事業を遂行するにあたって、
文科系の知識だけでは不十分で、理工系、医科系、言語系などと
の総合的な話し合いが要求される分野が多くなっている。
いわゆるボーダーレス分野といわれ、
例えば生命科学、宇宙開発、ロボット等々、
将来性が期待できる所ほどその必要性が高まっている。
ベンチャー企業、さらには複雑系の事業や研究開発に至るまで、
二十一世紀には異分野同士の知恵の出し合いが
勝敗や存続のカギを握っていることは論をまたない。
四大学連合はまさに、
こうした時代の要請に応えるものである。
ここで肝要なのは、
もう一度連合の持つ意義、メリットを大々的にPRし直すことである。
それには、大学だけの連合を前面に出すだけではいささか不足である。
大学サイドはそれなりの努力をされているが、
まだまだ不十分であり、
例えば互換単位を受講する学生は一握りでしかない。
これは無理からぬことで、
学生に浸透するには時間がかかり、
長期にわたって育成する事柄である。
OB連合の必要性
そこで私が提唱したいのは、
学生に比べ何倍もの陣容を擁するOB同士が提携して連合を作ることである。
この提携は即、戦力となり、
しかも社会的にかなり有意義な活動が期待できるからである。
私は如水会横浜支部に属しているが、OB同士の提携の必要性を説き、
東工大のOB会である蔵前工業会の神奈川県支部 (都道府県単位) と、
東京医科歯科大のOB会を束ねておられる廣川前副学長を通じて、
横浜地区の方々との交流を呼びかけ、
ある程度の親交を重ねている。
しかし残念ながら、
いまだ各校の講師交換による講演会や催しの見学会、懇親会にとどまっている。
真に会員同士の実業・研究などでの活発な交流には至っていない。
この投階まで本格的に活動するには、
一支部だけでは手が及ばない。
この限界を打ち破るには、
全OBを対象とした連合組織を立ち上げることが不可欠であろう。
その機関は確たる目標を掲げ、
企画立案から事務局機能に至るまで、
きっちりと結果を出す司令塔でなければならない。
連合他校のOBはその大学の性格上、
専門分野別の縦の結束や交流に傾きがちで、
横の連携は苦手のようである。
したがって、こうしたOB連合構想に簡単に乗ってくれるかが最大の関門となろう。
この一事をとっても、立ち上げは容易ではあるまいが、解決の道は必ずあると思う。
ブランドカ向上に積極的なPR
競争社会では実力のある組織、会社ほどPRに力を入れている。
国立大学法人になった以上、
一橋の名を全国に知らしめる努力を怠ってはならない。
全国の文科系を目指す優秀な学生が今以上に受験するよう、
どこに特色があるか核心をついたPRを、
地方紙をはじめとするメディアを通じて全国展開すべきである。
そこにさらに、
四大学連合のOBを含めた諸活動と、
その新しい成果を盛り込むことができれば、
国立大学法人の中で新機軸を打ち出した大学として、
ブランドカを相乗的に高めることができる。
実力があるのにブランドカで劣る四大学が、
束になって確かな結果を出せば、
東大を抜き去るのはそう難しいことではない。
大学連合を竜頭蛇尾に終わらせてはならない。
昨年、大学の格付けで東大が日本格付投資情報センターからAAAを取得したのに続き、
ごく最近、一橋も日本格付研究所からAAAを取得した。
今こそ名実ともにトップへの道を不動のものとする好機なのである。
DATA | 四大学連合 | ||