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如水会ゝ報 2006・11 No.918
一橋スピリットの継承
こいずみ いたる
小泉 格
(平10法)
学生時代に小平祭や新入生歓迎委員会の委員として如水会にお世話になった関係で、研修文化委員を拝命して六年、今般任期を満了しました。委員会では当初、平成卒業生は私ひとりで、社会経験の豊富な先輩方に色々ご指導頂き、多くを学ばせて頂きました。
国立大学法人制度がスタートして、旧帝国大学のみならず私立大学も個々のアイデンティティーを打ち立てつつ、同窓会を組織して経済的・精神的な基盤を強化する動きを加速させています。わが一橋大学では伝統的に、如水会による母校支援体制が確立していることが強みです。他大学のOB会から事務局に問い合わせが増えていると聞いています。
そうした中、研修文化委員会では、連続講演会「一橋フォーラム21」のテーマや講師の設定などを担当しています。私としては以下の二点に留意してきました。
(1)他機関主催の連続セミナーでは行なわれないような「一橋らしさ」(一橋のアイデ
ンティティーに適った企画)を出すこと。
(2)通念・常識とは差異がある主張でも、価値があると思われる場合は積極的に取り上げること。
六年間の結論として、一橋大学は一橋スピリット」を核に思想と行動(社会改良運動)とが一体となって発展してきた学校であるにも拘らず、この点についての理解は近年、形式的なものにとどまっていたのではないだろうか、という思いを深めています。
他大学と異なり、改めて大学のアイデンティティーが問われる事態にまで追い込まれていないことは良いとも言えます。しかし、例えば、福田徳三、小山健三、左右田喜一郎、上田貞次郎、平生釟三郎、菅礼之助、美濃部達吉、沢柳政太郎、安達峰一郎、米谷隆三、牧野英一、山内得立、笠信太郎、中山伊知郎などの著名な諸先生・諸先輩の名前を正確に読み書きし、顔写真を判別し、一橋での活躍と社会における活躍振りを把握している卒業生はそう多くはありません。特に、我々平成卒業生は極めて限られてしまうのが実態です。
一橋フォーラムの場においても、一橋で三十年に亘り教鞭をとられ学生の人気も高かった牧野英一博士 (東京商科大学名誉講師、東京帝国大学名誉教授)を取り上げたところ、一橋精神(スピリット)再発見」という統一テーマとのギャップを感じられたためか、「一橋に何の関係があるのか」と抗議を寄せられた方が複数おられました。
第53期「世紀を超えて日本の道を探る」では、「『唯識』という生き方」 の講演を企画
し、二一世紀に向けて山内得立博士の「随眠の思想」の復活・再評価を企図しました。しかし終了後のアンケートでは賛否両論、ほぼ半々に評価が分かれてしまいました。そもそも山内博士のことが知られていなかったのです。
山内博士は京都帝大で西田幾多郎(旧京都学派の始祖)、独フライブルク大でE・フッサール (現象学の始祖) に師事し、左右田喜一郎博士 (経済哲学の始祖) の推薦でドイツ留学中に東京商大の助教授に抜擢され、東京商大教授、京都帝大教授(京大教授)、京都学芸大学長等を歴任。一九八二年に九十二歳で亡くなられるまで哲学の泰斗として活躍されました。主な弟子に、一橋では馬場啓之助、太田可夫、藤井義夫、
坂田太郎など、京大では山田晶、梅原猛などの諸氏がおられます。
縁あって研修文化委員を拝命し、一橋の学統や文化的遺産の素晴らしさに蒙を啓かれた者としては、風化しっつある一橋スピリットの語り部としての如水会の更なる振興、そして一橋スピリットの復権・復興に拠る日本社会の更なる発展を切に祈念しております。
(三菱商事(株)勤務)
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第59期一橋フォーラム21「一橋精神(スピリット)再発見」の十二回講演全文は加水会HP会員専用ページに掲載しております。 (事務局)
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小泉君の「一橋スピリットの継承」を読んで 山崎 坦(5組)
戦前の学生である私共は、上に名前を掲げられた先生方20名余りのうち、
その半数ほどの先生方にはリアルタイムで教えていただいた。
上田貞次郎先生は当時学長であったから、予科では修身の講義を伺い、
キャプテン・オブ・インダストリーやノブレス・オブリージュの精神を吹き込まれた。
上田学長は、悲しいことに、私共本科のとき、急逝された。
(上田先生胸像の建設と朝倉先生の思い出)クリックして読んでください。
牧野英一先生には法学原論(ご専門は刑法だった。)を教えていただいた。
先生は講義が聞き取れぬ場合は「エヘン」と咳払いするように言われていた。
藤井義夫先生、太田可夫先生には小平の予科で哲学を、
山内得立先生には本科でギリシャ哲学の講義を伺った。
中山伊知郎先生には「純粋経済学」を教えていただいた。
笠信太郎先生は朝日新聞で「花見酒の経済」著書を拝読した。
劈頭右肩に[一橋の学風とその系譜][目次]をリンクしておいたので見てください。
美濃部達吉先生のことは田上穣治先生並びに吉永先生が明快に解説されています。
このHP「卒業アルバム」の項に恩師の写真があります。クリックしてみてください。
[恩 師][ゼミナール]
参考記事・ [学生生活] 拙稿
第 1 章 回顧 (石油) 第 2 章 エネルギ−考 |
5組 山崎 坦 | 平成10年(1998)8月号 第99号12月クラブ通信 |
A 5組 張 漢卿 トロント だより :絵で見るドイツの今昔
Germany Now and Then in Pictures
以上のほか多くの学友が回想文を寄せている、読んでいただきたい文章が沢山あるので、
整理して目次を作りたいと思っている。
もっとも卒業30周年文集にはそのような整理がなされているので、
左欄外のバナー「30周年文集」をクリックして見ていただきたい。