如水会ゝ報   平成17年(2005年) 9月号(No.905) 「ひょうたん池」カルガモ クリック

如水会ゝ報 平成三年(1991)8月 第736号 p3 [橋畔随想]

国立キャンパス「瓢箪池」の再生を

平井規之
(昭45院経)

国立西キャンパス、磯野研究館と陸上競技場のあいだに二個の水溜りがある。
その形状と清例さのゆえに元来は「瓢箪池」と名づけられているのだが、
いまや打ち捨てられた水溜りである。
ひとは知っているであろうか。
かつてこの池から巣立って行った卒業名簿に載っていないいくたのカルガモたちがいたことを。

ここでは瓢箪池の現状批判とその対策と、あわせてカルガモ保護の施策を提案したい。

現状批判。

第一 ひょうたんの細い部分、すなわち真ん中の橋から西は粗大ゴミ捨て場と化し、ほとんど死んでいる。
許し難い現状だ。
第二、ひょうたんの口の部分には地下水を池に供給するパイプがあり、
ヘリに岩石を配した水の通りが一応あるのだが、この配水が断たれている。
したがって、この永溜りが唯一享受できる水資源は天水だけである。
排水口はあって水量を一定に保っているけれども、肝心の取水がまことに乏しい。
かくして池は水溜りもしくはよど(澱)みと化している。
第三、池の死んでいる部分の先端を除いて池のヘリは不粋な水泳プール風のコンクリの壁になっており、
年によって産みつけられたおたまじゃくしが肺呼吸段階に達したとき外部の地べたに出られない。
何ということだ。

対策。

簡単である。
右で述べた三点をすべてくつがえせばよい。
清流ここにありという瓢箪池に戻す気になりさえすればよい。

カルガモ。

この六月半ば、友人のカメラマン、通称「ケンさん(風馬賢氏)」が
わが大学のキャンパスにアオゲラが巣をつくっていると聞いたので撮らせてほしいというので、
情報センターの鷹野女史に案内を請うて、
コゲラ
― 何と前日巣立ったそうな ―
とアオゲラの営巣の跡を見て歩いたが、
その折、瓢畢池にカルガモの親子がいたのである。
三羽のヒナがふた親に挟まれてわが水溜りを泳いでいた。
親が卒業生であることに疑いはない。

カルガモ保護対策。

ヒナが三羽というのは意味深長である。
つまり、二羽か三羽はすでに猫またはカラスにやられたことを意味する。

実際、われわれ三人が別れたあと、
ケンさんは小生への礼と記念のためにといって件のカルガモの撮影のために池に戻ったのだが、
そのわずかの時間に三羽のヒナは二羽に減っていたという。
岸に近づいたとき猫にやられたか、あるいはカラスの急降下攻撃にやられたのであろう。

猫は強い。大学構内は捨て猫の天下だ。
晴れた日など、生協横の広場では学生諸君に伍して連中が寝そべって大あくびをかいている始末だ。

小生の中学時代、
どこの競技に出しても立派に飛んでいた伝書鳩を一夜野良猫に全部やられた経験がある。
だから、小生は猫に対する頑固な偏見をもつ。

それはさておき、とりあえずの猫対策として池の真ん中に島をつくるべきだと思う。
現在も一塊の岩があるが、あれではなく草を植えた島にすべきだ。
それと、ここから先は専門家にまかせるが、
岸辺は生い茂る草が池に向かって垂れる体にすればよい。

野盗カラス対策としては、島をおおう屋根ないしは傘を設けるのがよい。

かくして瓢箪池は名実共に再生する。



カルガモを
恋うる池塘に 雨が降る




(一橋大学経済研究所教授)