月刊誌「文芸春秋」2011年9月号「99歳の日本人への遺言」新藤兼人(映画監督) 聞き手河邑厚徳
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新藤監督は来年の四月に百歳になる。最近は、ニュースを見ながらこんなことを夢見ているという。
明治生まれの男の夢想は天衣無縫ですがすがしい。
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津波は大変だったと思います。歌ったり踊ったりするのもいいけど、もっと実際的に役に立つ案を出したいね。

僕は万里の長城を作ったらどうかと思う。
青森の突端から関西、九州まで。幅は十メートル。ドライブウエイができるわけ。
百姓の根性でね、ガ一つと土着的にやるんですよ。
青森の突端から九州まで、幅が十メートル、高さは二、三十メートルで津波を見降ろすかんじ。
途中で船も人も出たり入ったりできるようになってましてね、
津波が来ても、来てるなぁと、上から見下ろせる。

日本の土地はそういうところなんだから、逃げてちゃだめだね。向かっていかないと。
「津波、何するものぞ!」と。

そんなことをいったら、笑われちゃったよ。

だけどここから逃げていくわけじゃないでしょ。
ずつとこれから百年も二百年もここにいるんだからね。