●訃報 5組 早川 泰正 君


学友 早川泰正君の霊に捧ぐ:
 

悲報に接して驚愕し残念に思っています。

君と僕との付き合いは今を去る七十五年前のことでした。 
お互いに東京商大予科の入試に合格して小平の校舎に集まり、
爾来三年間「五組」の教室を共にし、
そこで授業を受けたばかりでなく、クラス会を開いたり、雑談の場所にしたりしました。 
その間一年を一橋寮で一緒に過ごしました。
 

君は雪国の北海道から、
僕は常夏の台湾からと、
クラスの中で南北のひらきが最も大きかった為に返って親しくなったと記憶しています。 

君は抜群の読書力を持って居たから、良書を数々教えてくれ、
特にヘルマンヘッセの著書を勧めて頂いたのには、今でも感謝しています。
 

クラス対抗のボートレースで、
君と僕は五組を代表して、六人漕ぎの古い船に乗って隅田川で訓練しました。 
勝負には弱かったが、練習中吾妻橋の袂で食べた太鼓焼きの美味さは今でも忘れません。 

また夏休みを利用して、小諸の韮沢嘉雄君を訪ね、浅間山麓の名もなき温泉宿に泊まり、
絞り立ての牛乳を飲み,蝗の
佃煮で晩酌しました。 
「幌馬車の歌」などセンチなメロディーを歌いました。
 

学部に上がった後は、
ゼミナールが違って居たから、話をする機会が減りましたが、
お互いに理論経済学を専攻していたので、出会うたびに議論を戦わしました。 
戦後台湾で君の名著を読み敬服しました。 
かかる優れた学者が人材養成に尽力している日本は、必ずや速やかに復興の途に上がるものと信じました。


 早川君、

君は極めて有意義な一生を送りました。 
なにとぞ安らかな憩いをなさるよう、
謹んでご冥福をお祈りいたします。

 

張 漢 卿  
カナダ トロントより