母校の「あるべき姿」
櫛部吉正(くしべ よしまさ)
(37法)
1、はじめに
母校は今年創立140周年を迎えたが、国立大学は今、政府・文科省から厳しい改革を求められている。そこで、次の150周年に向け母校の将来の「あるべき姿」について考えてみた。
先ず、政府・文科省の国立大学改革の心に改革を推進してきた。
今年度、国立大学各校は、第3期(同28〜33年度) の中期目標・中期計画を策定中で、先般示された蓼沼学長の「一橋大学強化プラン (1)」はその一部であろう。
では、政府・文科省は今後国立大学改革をどのように進めようとしているのだろうか。政府は、成長戦略の一環として理系重視の改革を進める方針で、文系大学・学部のリストラを強く求めており、文系軽視も甚だしい。国立大学協会の里見会長(東北大学鎗長)も「人材育成のスパンが近視眼的。グローバル化のための異文化理解には文系が不可欠」と政府を強く批判している。
更に母校にとって今後重要なのが、今般創設が決定した「特定研究大学制度」で、全国86国立大学を、@世界最高水準の教育研究拠点大学、A地域活性化の中核拠点大学、B特定分野の重点支援拠点
大学に3分類し、文科省が教育研究の卓越性、グローバル性、運営体制の整備など一定の要件を満たす数枚を「特定研究大学」に指定、世界トップクラスの教育研究大学とすべく特別支援するもの。母校は昨年度残念ながらSGUに落選したが、その後の蓼沼学長はじめ大学関係者の皆さんのご努力で、@の「世界長高水準の教育研究拠点大学」として認められた。ただこれで安心は禁物だ。「特定研究大学」に指定されるには、文科省が求める先の要件を満たす革新的な構想を如何に示すか、に懸かっている。
そこで、母校の将来の「あるべき姿」として、次の提案をしたい。
2、提言「母校のあるべき姿」
▽ビジョン
建学の精神「Captains Of Industry」を発展させ、世界の平和と繁栄に貢献する各界のニューリーダー「New Captains of the World(the Worldは世界と各界の両方の意)」の育成を目的とし、高潔な人格・深い教養・高い専門性・優れた語学力を教育する我国唯一の「Cosmopolitan University」を構築し、日本の一橋から世界の一橋に大きく飛躍する。
▽提案内容
現在の商経法社の4学部を1学部に統合し、従来からの改革を引き続き推進する。定員は1学年1000名から500名に減員し、伝統の少数精鋭教育を徹底する。
新たに定員が500名の「国際戦略総合学部」 (対外的には「Hitotsubashi Multi School of Global Strategy」)を開設。日本および世界、特にアジアなどの
発展達上国・地域から優秀な学生を集め、世界の平和と発展に貢献する新時代の各界のニューリーダー「NewCaptains of the World」を育成する。
▽背景
明治から戦後の高度成長期までの日本と、熟成期に入った現在および将来の日本とでは求められているリーダー像が違う。
現在、各大学は国立大学改革の中で、己の特色の強化が求められている。母校の伝統的強みは、グローバル化と少数精鋭教育であり、これを一段と強化し再構築するには、学部新設の方が実現し易い。
日本の18歳人口は、昭和30年代200万人、ベビーブーム時代250万人、現在120万人、10年後は100万人と予想されており、受験生を広く世界から求める時だ。
▽国際戦略総合学部の概要
@開設は蓼沼学長第1期中、遅くとも150周年まで。他校との差別化を早期に実現。A英語力最重視とし、受験の絶対条件は全受験生TOEFL iBT90点以上(120点満点)。母校データでは、母校卒業生で同90点以上はそう多くはいないようだ。また、米国有力大学への留
学にも90点以上必要だ。B入試科目は国内外受験生とも数学と一般教養の2科目のみで、両科目とも英語によるiBT出題とする。C授業内容は、英語・第2外国語・英語講義によるリベラルアーツ・同専門分野。D英語の授業では、高い次元の英語を教育。Eリベラルアーツ
授業では、哲学的思考・歴史観・文化論などを通じ、異文化も充分理解出来る深い教養と見識を教育。F論理的な分析力を磨くための数学も教育。G専門分野の授業は、政治・行政・経営・金融・法曹・会計ほか、時代の変化に柔軟に対応し高度な専門知識を教育。H授業形式は、世界トップクラスの教授陣による講義・ゼミ中心の少数精鋭教育。将来的には、世界的なインターネットベースの授業展開を構築すれば、教授、学生ともわざわざ来日する必要はなく、著名な教授や優秀な学生も集め易く、費用も節約出来る。O全学生に第2外国語の習得を義務付け、優れたTrilingualを育成。J卒業の絶対条件は、必要な単位取得とGMAT700点以上 (800点満点)。Q学費等の財政支援制度を設置。
GMAT:Graduate Management Admission Testの略。欧米有力ビジネススクールで学ぶために必要な分析力・英語力・数学的能力を測るテストで、合格点は700点以上。
▽効果
第一に、新設学部は文科省の施策の範囲内で開設可能。安倍政権の理系重視の大学改革でなくても、充分日本・世界に貢献出来る。第二に、将来本学部卒業生の中から、発展途上国・地域の各界リーダーの誕生も期待できる。第三に、世界からの母校の注目度が飛躍的にアップし、世界のトップレベルの教授や優秀な学生が集まり、結果として世界大学ランキングも充分トップ10を狙える。第四に、既存学部も刺激を受けレベルアップする
3、終わりに
以上が私の提案だが、新約聖書に「新しき葡萄酒は新しき革袋に入れ」とあるように、母校の改革も同様で、新しい器が必要だ。
また、ガバナンスの面での提案もしたい。現在の法律では、国立大学の学長は教育・研究および経営も行うことになつている。これは学長にとって大変負担のはず。そこで、学長は実質的に教育・研究に重点を置き、経営は民問から登用する副学長に任せたらどうか。かつて、私の職場の後輩(東工大経営工学博士課程卒) が東工大の副学長になり大いに活躍した。大学経営の出来る卒業生は沢山いる
これも現行法で可能なので是非早急に実現しては如何だろうか。
色々と雑駁な意見を述べたが、是非皆さんの声をお聞かせ頂きたい。母校の末長い発展のために。
(元且O和銀行勤務)
Dec2015 如水会々報 022