スーパーグローバル時代の一橋のあり方

     飯島 満
      (30経)

一、「大学側の姿勢
今年3月、昨年暮れに就任した蓼沼宏新学長が「一橋大学強化プラン(1)3つの重点事項」を発表した。これは政府で言えば首相の施政方針演説に当たるもので、私は学生や如水会員、更には文科省になるほどと思わせるようなインパクトを与えるものを期待していた。しかし私の印象では、残念ながら従来の枠を出ない質的向上を目指す内容に留まっている。
スーパーグローバル大学に4大学連合中わが校だけが落選し、これを如何に挽回するかの危機意識が感じられないのは私だけであろうか。

文科省は不採用の理由として「既に実施している取り組みの拡大であり革新性が乏しい」と指摘している。

それにも拘わらずこれを踏まえた改革案が示されていない強化プランでは、一橋大学は何を考えているのかと文科省の評価を益々落とす結果となろう。

また、この落選の事実をまだ知らない如水会員も多い。加水会々報等を通じて広く会員に知らしめ、
皆で挽回の手立てを早急に講ずるのが先決ではないか。

二、如水会側の姿勢
如水会の役割の第一に挙げられているのは母校支援であり、他の同窓会と違う誇るべき特徴となつている。
確かに昨今でも一橋大学基金の募金や一橋講堂の買い戻し等で絶大な協力をしているが、肝心の大学を輝かしい存在に高める内容の後援が不十分である。

6月に退任した如水会の前執行部は今回の落選を静観し、大学への「圧力団体」になりたくないとの姿勢を崩さなかった。然し圧力ではなく後援や助言は大いにすべきである。

大学側で不足している経営面での強化やサポートを行う事が今肝要な時機である。

三、大学側への対策・提言
 座して待つ時代は終わった。過去の遺産を食い潰すのではなく、積極的に打って出る事が肝心である。改革を進めている東大、京大が目を付けていない宝の山はまだ沢山ある。一橋大学の存在価値を高めるユニークで革新的な次の様な改革を「見切り発車」で良いから兎に角実施してほしい。

四、三大プロジェクトの提案
1、政治学部の新設
 グローバル化時代には政治ほど高度で実践的な学問はなく、これを疎かにしているからこそ日本の政治力のなさが世界で云々されているのだと思う。国立大学でミッチリ政治学を教えれば、先進国である日本の地位向上にも繋がる。
特徴が失われている一橋大学は、今こそリーダー格となる学部が必要である。
東大の理Vが難関の医学部で東大の牽引力であるのを見習い、超難関学部とする。
具体的には定員100名以内とし、入学試験は当面この学部だけ、数学、英語等の科目単位でなく政治家として必要なグローバルな視野、決断力、統率力、危機問題解決能力等を適切に審査出来る問題を課す。面接試験も必要で弁論、ディベートの力も見定める。日数は3〜4日以上掛けても良い。更に一般教養は2015年から行う推薦入学においては東大の様に「大学人試センター試験で一定の成績を挙げた者」に絞るか、または独自の試験で裏打ちしても良い。
 指導教官は全国から有能な人材を公募するか学校側で招聘し、一般の教授より高給を与える。資金は大学基金を大胆に使う。また、現在の国際・公共政策大学院は、将来、一橋大の政治学部出身者のみとする。
うたい文句は「一橋大学は政治家の養成、東大は官僚の養成。政治家を目指すものはわが校に来たれ」とし、広くマスコミを通じて大々的に宣伝する。
東大が官僚に見切りをつけ、当校より先にこれを打ち出したらお終いなのでとにかく先手を打って立ちあげることである。
「平成の松下村塾は一橋大学が担う」との気概を世に示せば、当校の起死回生は必ず達成出来ると私は確信している。

2、常勤理事長を置く
経営のベテランを民間の如水会員から選び母校の経営に専念させる。無理なら民間から常勤の理事を入れ学長の下に置く が、学長は権限を委譲して実質理事長並みの経営の任に就かせる。なお、1と2については本誌2月号「母校を思う」 の吉田幸夫氏「大学経営体制の強化と政治学をもっと前面に」をご参照。

3、教授陣の3分割
 司法官と同様、希望に応じ学校経営分野、教育専科、研究専門の3つに分けてそれぞれの道を歩ませる。これは石弘光元学長も唱えた案だが実現しなかった。
時代が変わりこの案は文科省も歓迎するのではないか。当校がパイオニアになれば一挙両得の知名度向上になる。
 この度、母校は文科省が2016年度実施予定の国立大学3分類のうちトップの「世界最高水準の教育研究を目指す大学」に名乗りを上げた。しかし内実が伴わないと却って評判を落としかねない。
それには血の出るような革新努力を要する。一橋大学の教職員の奮起を促したい。
五、如水会側への対策・提言
 日本一の同窓会組織だが、未だ改善する余地もあろう。項目別に列挙する。

@理事長は初代から上場企業のトップで占められている。将来は企業だけでなく幅広い見識のある者の立候補制にして選抜することも検討しては如何か。

 副理事長以下も違った分野から選び、 理事長に遠慮なく意見提示の出来る人物を揃えて欲しい。
 
 また重要ポストの事務局長は先代の2人共10年内外も勤務していた。これでは余りに長すぎる。勤務年限を定め、精々4〜5年以内に限定した方がよい。

A本部は支部との交流を密にするのが不可欠である。以前行っていた全国支部
 長会議を年1度位開催すべきである。 交通費等は当然如水会側が負担する。 財務体質が強固なのだからこうした必要事項に経費を惜しんではならない。

B総会はシャンシャン大会で終わるのではなく、今後の課題や問題点を提示して活発な討論の場を設けては如何か。

C如水会々報も、如水会創立101年目を機に、掲載内容を一新し「母校を思う」等の素晴らしい企画を充実させて、毎号論客に書いてもらい、改善を求める提案には学長の回答を次号以降に必ず寄せてもらう、著名人の紹介やその人生観を載せる等、会員が是非読みたくなるような記事を多くして、充実を図られたい。また、HQでも学校の良い
 ところだけでなく問題点も披歴し、会員皆で解決策を探るようにしたら良い。

        ◇

結 び
 
今母校は、二流に格下げになるかどうかのピンチを迎えている。人材は沢山いるのにこのピンチをチャンスに変える行動を起こす人物が少ないのは嘆かわしい。
母校愛は大学が輝いていた時代の卒業生即ち新制大学として出発した一橋大学の草創期(昭和28年~40年代初期)の者達ににしか湧かないのかも知れない。
 やはり母校の光を強くして、後輩達に「本当に良い大学だった」との我々の印象を受け継がせてやりたい。
 ″昔の光今いずこ=@でなく″今新た″にはきっと出来る

           (横浜支部相談役)