トロントだより  「ドラゴンボート」

                         5組 張 漢卿

Thu, 30 Sep 2004
Dear Yamatan,

酷暑の東京も秋分けて、急に涼しくなったとのこと、よそながら安心致ししまし た。
「暑さ寒さも彼岸まで」という諺どうりですね。
昔の人は、一年を15日ごとの24節気に分けました。 
それは大自然の変化を 観測して発見した「季節のリズム」とも言えましょう。 
戦前の日本では、端午の節句のような行事が重視されていましたが、デジタルカメラやアニメ映画に熱中する今 日の若者たちには、おそらく馬耳東風としか聞こえないことでしょう。  

去る六月下旬、端午の節(旧暦)を記念して、トロントの湖辺でドラゴンボート の競漕が盛大に行われました。 
その成功に鑑みて、当地の慈善機構が防癌資金募集 の為、九月の中旬に第二次の競漕を主催しました。 
その風景がアタッチメントのよ うな写真として、新聞に載せられました。
前後2回ともそれぞれ百六十艘ほどの「龍船」が参加し、銀行、会社、学校、団 体を代表する男女老幼数千人が乗り込んで、声高く飛沫をあげて漕ぎまくりました。

こうして世界の各地で優勝したチームが翌年ホンコンに集まって世界チャンピオンシッ プを競うするのだそうです。

従来のレガッタは、せいぜい8人乗りで、単列、後ろ向きという不便があるのに 反して、ドラゴンボートは20人の漕ぎ手が左右二列、前向きに乗り、船尾の舵手に 加えて、船先きにドラや太鼓を叩く水先が掛け声高く拍子をつけるので、前後左右の 連絡が良く、和気藹々に参加できるという優点をもっています。

そのむかし汨羅の水に身を投じた屈原の遺体を求むべく、村人達が推し出した大 船、小舟は目的を果たし得ずに戻りました。 
しかしそれが年中行事となって2300年後の今日まで続けられたばかりでなく、今や洋の東西を問わず、世界的にポピュ ラ−なイベントにまで成りました。 楚国の滅亡を防ぎ得ずに世を去った大文学者屈 原も、思い残すことなく瞑目していることでしょう。 ED