運 不運 1組 里見泰男(治男・弟)

 

 現在兄は生きていれば84歳です。私は75歳で家内共々そこそこに健康です。豊かなこの国の現況の中で、28歳でレイテ島で戦死した兄がなんとも可哀相でならず、昨年4月、世紀も変わることだし私も心の整理を付けたく、菩提寺の住職にお願いして、戦死の地アビアオに供養の旅をしました。

 そこは第一師団本部の師団長以下上層幹部780名が四艘の船に分乗し「後続の船に乗り込め」と言い残し、本人達は大本営の命でセブ島に転進のため船出した海岸です。名誉ある第一師団として本当に酷い話です。レイテ島に残された師団の1万2千弱の応召の将兵は兵器・糧食の補給の無い侭、戦死か病死・餓死の悲しい運命を辿りました。今は戦争の跡方もない平穏な青い静かな海岸がひろがるばかりでした。私は人それぞれが持っている運の中で、兄はこういう悲しい運命の巡り合わせだったのだと割り切り、心を納得させ読経をして貰いました。そう考えますと、無事に戦争を乗り越えた方も運のお陰であり、この私も幸運に恵まれた部類の一人だと思います。

 人生には三度の運があると言いますが、ある人ない人これも運の悪戯でしょう。生き残った幸運な人達は、敗戦の焦土の中から幾多の艱難を克服して来ましたが、その中には沢山のドラマもありました。誰が今日のような素晴らしい日本を想像し得たでしょうか。これを体験出来た我々の人生は実に貴重で、幸せであったと感謝をしています。こんな単純な思いを持つ私は残された生を夫婦共々とにかく元気で、出来得る限り亡兄の冥福を祈るのがせめてもの私の役目だと思って居ります。

 最後に東京商科大学卒業六十周年記念をお祝い申し上げ、私共兄弟にお寄せ頂きました厚い、且つ永いご友情に衷心より御礼申し上げます。諸先輩の益々のご健勝とご多幸を祈念致しております。
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里見泰男様へ
Date: Fri, 30 Aug 2002 16:29:23 +0900

セブ・レイテ島慰霊巡拝を無事終了しました。
巡拝地は30箇所に上りました。
貴殿の卒塔婆がまだ健在なのを確認致しました。
 
相 原 公 郎
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