夕陽の日々 2組 松田 緝

 

 12月クラブの諸賢の多くが、馳せ場を走り終えて自らの生を完結しているのに、肺気腫で酸素吸入器を常持し、医師の見放した直腸癌を抱えて、来る4月19日に84歳の誕生日を迎えることになった、夕陽の日々の報告を、記するほどの値もないことながら、書き留めます。

 朝、目をさますと、呼吸の加減を見計らって用便をすませるのだが、これが一仕事で、その後机に向かって、次のような順番で本を開く。

(1)レクラムのギリシア・ドイツ語対訳の Die grichishe Literatur in Text und Darstellung(現在 Klassishe Periode Tの S.298−299)

(2)Michael Grant, The Rise of the Greeks(現在P.284)

(3)The Cambridge Ancient History(現在、V Part. 3. P.412)

(4)Loeb Classical Library のギリシア・英語対訳の Aristophanes(現在1.の The Knights, PP.216−217)

(5)ギリシア語文法書(3種)

 この(1)−(5)を1日で一巡することもあるが、大抵は2日ぐらいかかる。それぞれの分量は切れ目のよいところで適当にきめられる。(1)はトゥーギューディデースで、難解な文章だが、そんなものだと思って読んでいる。一番面白いのは(5)で、今の私にとって生き甲斐の最たるものだ。

 この様に年貢の納め時のかけがえのない楽しみを見つけることのできたのは、予科の時習った村松先生の訳本のあるブルクハルトを、還暦後に読み直したおかげなのも、奇縁というべきか。

 以上、馬齢を重ねて新しい千年期を迎えた老骨の夕陽の日々の要約です。身体の苦痛を、心の楽しみで、相殺する日々も乙なものです。

 諸賢の健在を祈ります。

(2001年4月11日)