5組(すこやか委員長)韮澤 嘉雄 |
はじめに 2001年3月12日に、3組と、「すこやか委員会」の共催で、3組の浮洲君の中学時代の学友、元国立衛生研究所長の宍戸亮先生から12月クラブで健康に関するご講話を伺った。先生によれば、人間は40兆の細胞から成っており、空気が汚染されていないとか、食事、運動、睡眠、禁煙、酒などを理想的にしていれば、120歳まで生きられる、しかし、空気はじめなかなか理想的にいかないので、せいぜい100歳ぐらいで逝ってしまうのだという。 ご講話のあと、14階の一橋クラブで、2組の村山君の奥様が私に『韮澤さんは150歳まで大丈夫ですよ』と言って下さった。嬉しかった。やはり人間は、『あなたは長生きしますよ』と言われればいい気持になる。150歳といえば、私はこの8月31日で満82歳になったが、あと70年近くを生きられることになる。それもしんどいが、しかし、逆にあと3年か5年で死ぬと考えると、これは大変だ。忙しい。私は、遺言もまだ書いていないからあわててしまう。とにかく、あと数年のいのちなどと思うのはよくない。精神衛生上滅入っちゃうからからだにも悪い。やはり120歳、つまりあと40年近くは生きられるんだと考えた方が心にもからだにもいい。 ただ、長生きしての大きな問題の一つは、生きていてもアルツハイマー病などで頭がボケてしまってはいけないということである。これは家族はじめひとさまの迷惑になり、医療費がかさんで国の税金をムダ使いするだけで頂けない。「PPK」(ピン・ピン・コロリ)でなければならない。そうなるべく、私は、よく眠るけれども、起きている間は、常にアタマを使うように心掛けている。私は、日本記者クラブの“質問魔”で、特に外国の要人に辛口の質問をすることで有名であるが、これは頭の老化防止にいいようだ。多いときには400人ぐらいのジャーナリストがいる前で質問するのだから、ふだんから勉強しておかなければならない。 長生きしてのもう一つの大きな問題は、それまでに友人、知人がこの世からいなくなってしまうことである。それでは淋しくてどうにもならない。そこで、十二月クラブの会員、準会員の方々にはぜひ長生きして頂きたい。そのための一助にもなればと思って、私の自己流健康法をまとめてみた。以前にも、十二月クラブ会報に載せたことがあるが、これはその改訂版である。少しでもご参考になれば幸いである。 私が毎朝すること 私は、朝5時から6時までの間に起床する。洗顔、歯みがきのあと、梅干しを食べ、水を飲む。梅干しは、近所のスーパーで塩分5%というのを見つけた。なくなりそうになると家内が買いおいてくれる。梅干しは殺菌力があって、からだにとてもいい。 それから、テレビを見ながら体操を約20分。特に腰の屈伸に力を入れる。数年前まではカケ足をしていたが、やり過ぎて変型性膝関節症になってしまったので、今はやらない。60過ぎてからは、かけ足はいけないのだ、歩くのがいい、ということを医者に教えられたが、あとの祭り。(もっとも、このごろは少しよくなってきたが)。体操は億劫(おっくう)だ、しんどいなどと思わないで、からだは自分の命令で動く道具なんだと考えること。からだは使わないでいると、なまってしまう。これでいいんだと横着になってしまう。からだを怠けさせないように常に使っていることが肝要。からだについての発想を変えること。体操は特に腰の屈伸に力を入れる。腰は重要なので、ちょっとでもおかしいと思ったときには、貼るホカロンを当てる。ただし、低温やけどにならないよう手拭いを折って当てて予防する。 体操のあとは入浴。毎朝必ず入る。入らないと気持が悪い。入浴すると、とても気分爽快になり、食欲が出てくる。 入浴のあと、朝刊をとりに行く。私は、元新聞記者であり、今でも日本短波放送で、毎週1回、金曜日に国際政治経済問題についてニュース解説をし、また月1回対談を受持っているので、新聞は朝日、毎日、読賣、日経、産経、東京、信濃毎日新聞と7紙取っている。これらを読んで切抜くのは頭の体操になっていいようだ。 だが、これは大変な仕事で容易ではない。こんどのアメリカの同時多発テロのようなことが起こると特にそうだ。 それから朝食。自分で作る。特色は、日替わりで、いろいろなものをスープにして飲むこと。モロヘイヤ、パセリ、にんじん、ほうれん草、大根、ごぼう、じゃがいも、キャベツ、そら豆、かぼちゃ、なす、かぶ、ねぎ、玉ねぎ、セロリー、ブロッコリー、ふきのとう、ふきの葉・茎、椎茸、なめこ、その他のきのこ、ひじき、などなど、何でもコンソメスープにして食べること。ただし、小松菜は出し昆布と鰹節と日本酒少々に醤油を入れて食べるのがおいしい。 モロヘイヤはガン予防になるカロチンが断トツに多い。その次ぎにカロチンが多いのはパセリだが、普通は洋食の添え物に少し出てくるだけで、しかもほとんどの人は食べない。ところが、スープにすればたくさん食べられる。その次ぎにカロチンが多いのはにんじん。これはスープのほか、うでたのに3組の柴沼君の柴沼醤油の「あわ漬け」をかけて毎朝必ず食べる。ひじきも油揚げと一緒に煮たのでは、そうたくさんは食べられないが、スープにすれば3倍も4倍も食べられる。ひじきはカルシウムを多く含んでいる。どのスープも前の晩に家内が仕込んでおいてくれるので有難い。 朝食は、前述のスープとにんじんのうでたののほか、わかめの酢の物に鰹節と前記の「あわ漬け」をかけたもの、うで卵、しらたき、それにパンとチーズ(バターはとらない)とごま入りきなこを入れた牛乳1合。それから季節のくだもの。最近は、家内が血液をサラサラにするといって、レモンをしぼってくれるので、それにハチミツを入れて飲む。そのあとゆであずきを必ずとる。 とういことで、朝食はかなりヘビー。食べ終わると眠くなる。ここが私の健康法の第二の特色だが、朝食後、寝まきを着てもう一度床に入って眠る。1時間ぐらいだが、the second sleep は体操、入浴,食事のあとなので実によく眠る。私の健康哲学の一つは「人間は疲労が累積するから老化する」というにある。だから、一日のうち何回も眠って疲労を取ってしまう。眼ったあとは爽快。元気が出る。 the second sleep のあとは、からだをお湯で拭いて、新聞の切抜きをしてから出勤。小さな事務所の“お山の大将”なので出勤時間は自由。よほどのことがない限り、午前中のアポイントメントは作らないようにしている。 出勤の途中と昼食とそのあと 西荻窪から JR と地下鉄で虎ノ門へ向かうが、その車中でも、首の体操、腰の屈伸をするか、あるいはアイマスクと耳栓をして眠る。首の体操と腰の屈伸は、虎ノ門に着くまでに150回はできる。血の循環がよくなって快よい。眠る方は必ずしもよくは眠れないが。でもアイマスクをしているだけで眼の休養にはなる。 事務所で仕事をして昼食となるが、何かの会合で洋食などを食べるとき以外は、昼食はすしとかうどんとか比較的簡単。すしはからだにとてもいいという話なのでよく食べる。特にガリ(しょうが)はいろいろな薬効があるので、何回もおかわりして食べる。ガリはただである。 昼食のあとは、どうしても眠くなるので、事務所のソファーでアイマスクと耳栓をしてひと眠り。30分ぐらいだろうか。気分爽快になり午後の仕事に邁進。眠いのを我慢して仕事しているよりずっと能率があがると自分では思っている。 夜はパーティーや会食などアルコール分を飲む機会が少なくないが、日本酒の場合には、ある程度廻ってきたら、必ず氷の入った水を飲む。戦前だったら、「酒の席で水を飲むなんて男として卑怯だ」と一喝喰らってしまうが、今はそんなことは言われないから、大いに水を飲むのがいい。日本酒が一番危険で、愉快になってさしつさされつしているうちに、どれくらい飲んだかわからなくなり、つい深酔いしてしまう。それが途中で水を飲むと自制するようになるし、何より酒が薄まるせいか、二日酔いにならない。 家での夕食と睡眠 飲む会がない日は、6時ごろ事務所を出て家路へ。このときも JR と地下鉄の中で、首の体操と腰の屈伸か、あるいはアイマスクと耳栓で眠る。 帰宅すると、まず入浴。(ただし、酒を飲んできた夜は入浴しない。心臓によくない)それからテレビを見たり、夕刊を読んだり、家内と世間話をしたりしながら夕食。酒のさかなの定番は、まず「鶯宿梅」(おうしゅくばい)。これは九州小倉の「万玉」という料亭が作っている梅干しを濾(こ)したもの、後輩の昭35年社会学部卒、鹿島建設の岩松良彦副社長から頂戴して知ったのだが、絶品。少し取って焼のりで巻いて食べると之も言われぬ味。酒がすすむ。お酒を召し上がらないご婦人方にも食欲が出て、特に夏の暑いときにはおすすめ。鶯宿梅は、日本橋の高島屋の地下1階で入手できる。2,100円だが、毎夕少しづつしか食べないから、なかなか減らない。とても割安。 「鶯宿梅」の次ぎは、近所のスーパーで見つけた若鮎のつくだ煮。これが苦味があってなかなかいける。苦味は最高の味。そのほかたらこ、うに、いかの塩辛、釜揚げしらすに大根おろしなどをさかなに、2年後輩の宇治田福時君のところの京都伏見の純米酒「玉乃光」をちびりちびり。陶然となる。不思議なことに、そとで飲んでいるとなかなか酔わないが、うちで飲むとすぐ酔ってしまう。やはりそとでは無意識のうちにも緊張し、うちではリラックスするのであろう。 家内が「野菜を食べなくてはダメよ」といろいろの野菜の煮物、うで物、つけ物を作ってくれるので、それを食べ、それから焼魚と、郷里、信州小諸の山吹味噌で作った味噌汁とご飯。もうあれこれたくさん食べているので、ご飯は茶わんに軽く1杯というところ。そのあと季節のくだものにごま入りきなこを入れた牛乳1合とゆであずき。 これだけ飲んだり食べたりすると、どうしても眠くなるので、10時ぐらいには床に就く。 ということで、私の場合には、1日のうち眠る時間の方が多いのではないかと見ることもできるようで、家内には「あなたは一日中眼っていて、オーストラリアのコアラのようだ」と言われる。そうかもしれないが、眠くてたまらなくなってしまうんだから仕方ない。でも、小刻み睡眠で、その日のうちに疲労を取ってしまうのが私の元気のもとなのではないかと自分では思っている。それから、私は、間食は絶対にしない。なぜなら、食事がおいしく食べられなくなるから。これも健康にいいかもしれない。 夏は炎天下を江ノ島の浜を歩く 私のもう一つの自己流健康法は、毎年、夏には江ノ島の片瀬海岸西浜に日帰りで行き、炎天下を、鵠沼海岸まで往復約4キロを歩くことである。7月と8月の、晴天で仕事を延ばせる日に出掛ける。家内は「とてもつき合いきれない」と言うのでひとりで行く。 小田急は安い。新宿から往復で1,040円だ。ロマンスカーに乗っても、それに片道610円上乗せになるだけ。海まで歩いて数分のところに「紀伊国屋」という旅館がある。そこで海の家と同じ1,500円で持ち物を預ってくれ、しかも海の家とちがって、旅館だから風呂に何回でも入れる。その上、私の場合には、長年のお客だからと、1,000円の特別料金にしてくれる。海水パンツ一つに昔の赤い水泳帽といういで立ちで、小物入れを肩に掛けて海へ。浜に着いて「青葉」というビーチパラソルや浮き輪を貸すところに行き、サマーベッドを借りる。夫婦で大歓迎してくれ、1,000円のところを700円でいいと言う。金額はともかく、どちらもその気持が嬉れしい。 海岸に行く。緑の江ノ島、おだやかな海の向うに富士山が見えるときもある。実に気持がいい。東京でうちでゴロ寝しているよりは、裸に潮風で涼しいし、暑くなったら海に入ればいいんだからずっといい。 うちで体操してこないので、30分ぐらい入念に体操したあと、鵠沼海岸に向けて歩く。仕事のことなどは何も考えないで、寮歌、校歌、島崎藤村の「小諸なる古城のほとり」などを放歌高吟しつつ歩く。派手なビーチパラソルが並び、若い男女が寝そべっている浜は目を楽しませてくれ、こちらまで若返る。赤い帽子が目立つせいか、2年前に TBS テレビにつかまり、80歳の海水浴は珍しいというので、インタービューを受けてしまった。「ニュースの森」で、この種の番組としてはかなり長く放送された。たまたま5組の谷君の奥様がご覧になり、お葉書を下さり、「こんどは鎌倉にも泳ぎにきて下さい」とあった。有難いことだ。膝関節症なのに、四キロ歩けるのは砂浜のせいだろうか。4キロ歩くと昼飯どきになる。江ノ島への橋の上のおでんや「はまゆう」でビールを1本飲みながらおでん。たまたまそこにいるお客と社会や天下国家のことを論ずる。名前も職業も知らない人同志の話なので勝手なことを言い合うことができ、面白くてためになる。このおでんやの前のおかみは人気があり、数年前に亡くなったときには、産経新聞が顔写真入りでかなり長い追悼の記事を載せた。 そのあと、サマーベッドでひと眠りして旅館に戻り、ひと風呂浴びる。さっぱりしたところで、ポロシャツ姿になり、日蓮上人が首をはねられそうになった龍ノ口の龍口寺のそばにある「高清」でさばのひものを、またそこからかなり歩いたところにある、やはり浮洲君のご紹介で十二月クラブで講演して下さった竹下景子さんご推奨の「浜野水産」の釜揚げしらすを、さらに片瀬江ノ島駅のそばの「貝安」ではまぐりを買って帰る。これらはどれも美味しく、家内も喜んでくれる。 入浴のあと、前述の「鶯宿梅」、若鮎のつくだ煮などとともに、これら片瀬のものをさかなに前述の「玉乃光」をちびりちびり。うまい。至福とはこのこと。運動したあとなので、からだの細胞のすみずみまで若返る。いつの間にか眠ってしまい、家内に起こされて床に入る。からだを使っているので熟睡。この夏は江ノ島に6回行った。去年は7回だった。 おわりに というのが、私の自己流健康法(改訂版)である。このせいかどうかはわからないが、幸いにして、私は、現在のところは元気である。しかし、「はじめに」で述べたように、私ひとりが生き続けても、十二月クラブの皆さんがいなくなったら生きていてもつまらない。皆さんがそれぞれご自分の健康法を実行しておられると思うが、いつまでも長生きして頂きたい。この私の健康法が、その一助にもなれば幸甚この上もない。この駄文について何かご質問がございましたら、どうぞご遠慮なく私のところにお電話なりお手紙なりを下さい。どんなご質問でも結構です。お答えさせて頂きます。 なお、老人になって一番困るのは目と耳が悪くなることです。緑内障は、自覚症状なしで突然失明することがあります。何もないお方でも眼医者に見て頂くことを強くおすすめします。痛くも何ともありません。また、難聴は、年を取ればだれでもなりますので、恥ずかしくありません。早く補聴器をつけることをおすすめします。耳の奥の神経がやられているのでして、早く補聴器をつけないとその神経が廃用性萎縮してしまい、そのあとで補聴器をつけてもきかなくなります。 |