この頃思うこと一筆 7組 秋元 茂

 

 よく今まで生きて来たものだ。東京に生まれ学校も会社も軍隊もすべて東京だった。出張と旅行以外東京を離れることなく83年も過して来た。幼時の他愛ない関東大震災の記憶や、終戦間際の度重なる空襲の惨状も遠い思い出になって了った。

 最近電車に乗ると若い人に席を譲られることが再三である。自分では意識していないが、老人らしい姿勢になっているのであろう。平均寿命を数年も超えては仕方あるまい。それにしても内心では余り有難いとは思えない。不思議なものだ。

 大正7年生れだから干支で言えば午歳で、正に馬齢を重ねたことになる。

 その間、愈々これで死ぬものと覚悟したことがある。終戦の年の8月9日である。当時品川在の軍需工場で働いていたが、6日に広島へ原爆が投下されたが、今日の11時に東京に落とされるとの噂が職場に伝えられた。逃げ出すことも出来ず、真青な大空を眺めながら、これが最後かと観念していたが、何のこともなく11時を過ぎた。後で長崎が被害地になったのを知った。単なる流言か、敵さんの気まぐれだったのか。

 近頃、人生の先輩だからと言われて、乾杯の音頭を頼まれる機会が多い。海外のツアーに参加した時など、それまで気楽にお喋りしていたのに、乾杯が終った後は、『そんなお年とも思わず大変失礼しました』と言って、妙に白々しい態度に変って了うのも寂しい限りである。

 それにしても12月クラブのメンバーは、ご夫人連のご協力の賜物か、本当に元気だ。体調に個人差があるのは止むを得ないが、数々の卒業60周年記念行事をやる活力は全く立派と言えよう。

 併し乍ら何れにしても もう暫らくの間だ。お互大いに楽しく頑張りましょう。