八王子少年院は、関東甲信越にある16の少年院のうちの1つで、八王子駅から徒歩25分ぐらいのあたりに位置している。この少年院に入寮する者は、重い処遇を受けたものであり、男子寮である。入寮するものの年齢も高く、16歳から21歳ぐらいだという。少年院では、分類処遇といって、対象者に応じたカリキュラムができるように、少年院によって収容される者の性質が異なる。医療少年院もあれば、特別少年院もある。八王子少年院は、平均的な少年院であり、身体、精神的にハンデのない少年で、元気いっぱいであるとのことだ。外国人も何人かいるとのことだ。
収容人数は195人。窃盗犯が約30%、薬物犯が約8%、残りはそれぞれであるが、粗暴犯や対人暴力(強盗、恐喝、妨害)が多い。また少年院ならではの、虞犯(罪を犯すおそれのあるもの)も3人収容されている。
少年院収容の保護処分は、はじめから期間が決まっているわけではないのでスタートは同じである。どれだけ社会生活に適応できるようになったか、更生できたかによる。
少年は少年院に入ると、個人個人の問題性、環境等に応じた指導計画を立てることになる。犯罪ごとにコースがあるわけではない。少年院の生活は、共同生活であり、課業と寮生活である。その中で少年たちは努力目標をたて、それに対して成績と言う形であらわされ、今後の少年の行く末が決まる。ちなみに今日は月末であり、成績をつける日だったため、作業はいつもより早く3時で終了とのことだった。
八王子少年院は設立されてから、約30年である。施設は、大きく分けて、中庭、体育館、寮、教室である。
施設内見学
まず案内されたのが、考査寮(ここは入寮して一週間ぐらい入って、これからの指導計画等をたてる)。次に隣に位置する、静思寮(その名のとおり、静かに思う場所。活動的なことはせず、家族の大切さなどを考える)。寮はその他に第一学寮から第五学寮まである。それぞれコースごとに分かれる。クリーニングや溶接、園芸、事務などである。期間はそれぞれによってまちまちで、1.5ヶ月から7ヶ月である。教室の前では、小型特殊の免許取得の練習が行われ、大きな声で確認の合図がなされていた。教室がある建物の中で、少年たちは作業を行っていた。溶接や、パソコン、危険物のテストも行われていた。その後体育館、中庭と見た。少し小さいかなと感じたが、この少年院の収容人数が200名にも満たないことを考えると納得がいった。また給食を作り食べる場所を見学した。一日三食、自慢の給食である。施設は、やはり鉄格子があり、逃げられそうなスペースはなかった。少年院の中は、もっと殺風景かと思ったが、ところどころに絵が飾ってあったり、少年達が作ったポスター等があった。我々が通ると少年たちは何事かと言う様子であったが、あのくらいの反応が自然だろう。
以下、見学者の質疑と少年院の教官の応答
質問1 出寮に関する少年院の判断と、裁判所が付けた期間の制限とに差違がある場合はどうするのか?
意見にしたがって、理由をつけて、延ばしたり、縮めたりする。
質問2 少年院が出寮後の仕事口の斡旋をするのか?
少年院が仕事口の斡旋をしてはいない。親や親類に使ってもらう。ハローワークで自分で探す。現在は出寮間際の者にハローワークからのサービスとして、ハローワークの職員が八王子少年院にやってくる。
質問3 希望を取ってコースは選ばれるのか?
初めに希望を取る。しかし人気のあるコースがあるため、必ずしも希望したコースに入れるとは限らない。パソコン、溶接、建設と人気がある。危険物は自学自習である。資格が取れるとは限らず、とれるようにがんばる。小型特殊は取れるが、大型は茨城県の施設へ留学してとる。
質問4 高校の通信課程を卒業したい場合は?
中学校の義務教育課程や、高校の通信課程は、それぞれに応じた施設がある。
質問5 再犯率は高いのか?それは何故か?
再犯率は約200人中40人で2割と多い。再収容はそれよりは少ない。再犯を防ぐために、保護観察処分等が付される。少年院が甘いから再犯するのかという関係は微妙である。
質問6 外部の情報はどの程度か?
テレビは少ない時間だがゴールデンタイムにみんなの多数決によって、見たい番組が見られる。ビデオも特別に見ることができる場合もある。新聞は3種ほどある。インターネットの導入は難しい。雑誌は保護者による差し入れになるが、チェックがかかる。手紙のやり取りは原則、親等であるが、友達などともできる。手紙は許可制であり、送る手紙も受ける手紙もすべて事前に内容をチェックする。
質問7 成績はどのようにつけられるのか?
個人、集団、課業この3つからなる。そして指導内容、寮での成績、努力目標などを総合的に審査して、個別担任が報告し、検討する。
質問8 少年院の中でのトラブルは?
あまりない。あっても暴力事件が年間数件ぐらい。
質問9 少年たちは見学されることに対してどう思っているか?
嫌だと思っている。今回の見学でも少年たちは我々が通っても冷静さを保っていたように、あのようなふるまいが当たり前にできる秩序を保っていられることがよい事で、教官たちの日々の努力の成果でもある。
質問10 面会の回数制限は?
基本的になし。しかし一度に全員はできないため、月に一回ぐらい、30分前後行われる。立会いがある。少年の親は8割から9割は面会にやってくる。面会にこない場合は、少年院から連絡をしたり、保護士の人がくる。
質問11 教官は寝食ともにするのか?
教官は少年たちと一緒に生活する。教官専用のアパートが隣にあり住んでいる。宿直は交代で行われる。
質問12 お風呂は?
冬は週に2回、夏は週に3回、スポーツ後にはシャワーが使える。夏は毎日プールがあるため問題ない。
質問13 少年が苦情を持ったときの訴える手段は?
違法行為に対しては、裁判所へ。日常的な不満は、職員による面接、指導が行われる。
質問14 少年たちの呼び名は?
〜君、〜さん、呼び捨て、さまざまである。
質問15 お互いの住所を交換して、出寮後遊ぶ事ができるか?
寮に入ったときの遵守事項として、お互いの住所は聞かない。何をやったのかも聞かないことが決まっている。規則を破れば指導がなされる。罰はあまりなく、叱る、謹慎20日間などである。
質問16 クラブ活動は?
木曜の午後一回行われる。自主的にはできない。