本多 幸吉  近況 (ホームカミングデー&卒業45周年同窓会によせて)

ボート部の合宿で授業にはあまり出席しなかったとはいえ、一橋寮、中和寮にそれぞれ2年いたので、ホームカミングデイ・卒業45周年の会には是非出席したいのですが、中近東の商売で最も多忙な時期と重なるため残念ながら欠席させて頂きます。

卒業以降、会社勤めは日本13年・英国7年・日本17年・オランダ2年・バーレン6年[今年が7年目]、日本にいる間も海外の仕事をしており、訪問した国は66カ国くらいだと思います。

仕事はアラムコのような会社に生産工程の制御・監視や安全対策をするオートメーション設備を納めることです。現在は、エジプト・イラク・シリア・湾岸諸国(サウジ・クウェイト、アラブ首長国連邦、カタール・バーレン・オマーン) ・イランを統括する会社で働いております。

世界不況は成金バブルのドバイの建設・不動産業の急落をもたらしましたが、バーレンはドバイのように急成長しなかった分、急激な転落もありません。堅実なサウジは最も影響が少なく、プラント建設プロジェクトも多少遅れはあるもののキャンセルはありません。一口に言って、中近東にはまだまだ仕事がある、ということで、前述の「多忙」はウソではないのです。

幹事から「新聞などでは伝わってこない現地状況を」とのアドバイスを頂いておりますので、皆様が得意な「経済」とは関係のない話をしましょう。

話題I
長年アパート代わりに住んでいたホテルから、フラットアパートに引っ越して1か月半がすぎました。次頁の写真はその近くにある、バーレン最大のモスクです。比較的新しいもので、丸屋根はグラスファイバーです。スンニーのモスクですが、シーアも入れます。我々異教徒も見学できます。建物の中に入る前に中庭のようなところにポスター展示があり、@イスラム教の説明のほか、イスラム教で誤解されやすいと(イスラム教徒側で)思っている2つの点が長々と説明されていました。その2点とは何でしょう? 答えは写真の下:

Aイスラム教はキリスト教を尊重します。Bイスラム教は女性を大切にします。

話題 II
当社のテヘランオフィスには女性が多く働いています。面白かったのはオフィスの中ではみなスカーフをはずして働いているのですが、外来者がドアをノックすると一斉にスカーフを着けるのです。これは当オフィスに限ったことでなく、客先訪問をした際に、まったく同じ現象を目の当たりにしました。帰途の機内で英国紙Financial Timesにイラン人の女性が書いているコラムを見つけました。それによると、結婚年齢が1970年代は男性21歳、女性18歳だったのが今はそれぞれ26歳、 25歳になっているとのこと。男性の給与が低いこと、女性が働きたがることが原因。そのため婚外セックスが増え、これはイスラム法に反するため、お上から助成金を出したり、集団結婚式をさせたりして「若いうちに結婚すること」を 奨励しているそうです。

話題III
先日会社のサウジオフィスに行きました。そこには女性が3名働いています。総務・人事の人間が「先ほど労働省の人が来て、女性を別の部屋に隔離しろと言い残していった。仕方がないので、書庫に使っている部屋に机をならべ、調べに来たときだけ、そこへ移動させる」と言っていました。大部屋で、大部分を占める男性と机をならべたり、向かい合わせたりして仕事をさせているのですが、「けしからん」ということらしい。労働省よりもっとたちの悪いのが宗教警察です。先ごろ首都リヤドでブックフェアがありましたが、展示会場で男女の人ごみができるわけですが、これもけしからんと。自著にサインをした本を女性著者からプレゼントされ、お礼を言った男性が「女性と口をきいた」ととっちめられたそうです。一年ほど前には自営のビジネスウーマンが仕事でたずねてきた男性と打ち合わせのために階下のコーヒーショップに席を移したところ「夫婦でもないのに」という理由で逮捕されました。今の王様は比較的開明的で、最近女性の副大臣をはじめて任命したり、宗教警察の上の人間を超保守派から首をすげかえたりして期待がもたれたのですが、そのあとでとんでもないことがメッカでありました。「夫婦でないのに自動車に同乗していた」として宗教警察に追われた女性が男性立ち入り禁止の「女性トレーニングセンター」へ駆け込み寺として逃げ込んだところ、宗教警察官(男性)が中に入ってきて、女性の髪をつかんで階段から引きずりおろしたそうです。サウジにも人権協会というものがあり抗議したりする健全さはあるようです。宗教警察のほかに宗教学者(坊さんではないが坊さんみたいなもの)にうるさいのがいて、昨年半ばころ「犬猫を散歩につれて外出するのは禁止すべし」との提案がありました。「お互いに知らない男女が話をする機会を与えるから」との理由です。さすが、これは新聞で批判されていました。

話題IV
湾岸諸国は「現地化」を標榜しているものの、外人労働者への依存度は依然高く、私のいる中近東会社も26カ国からの出身者で構成されています。インド・パキスタン人が多く休日の広場はクリケットで遊んでいます。湾岸諸国現地人は何といってもサッカーです。日本人にとっても中近東の国名は石油関連か「日本のサッカーの相手」として想起されるのではないでしょうか。私も会社の同好会で20代、30代の人間と夜ナイターでサッカーをしていました。夏は夜でも38度でシャツが汗で重くなります。アキレス腱を切ったので、治癒後はサッカーはやめましたが、バーレンで毎年行われる駅伝(16名一チームで各人3KM)には走者兼2チームのキャプテンとして参加しています。(写真中央)

多国籍軍の駅伝チーム。F1サーキット会場が駅伝の出発とゴール。