ブロンテ姉妹の作品と映画
2012年1月
送信日時:2012/01/09 (月) 15:36  
諸兄

昨年末に高校の同期生に送ったものですが、本文中(4頁)に、一橋2年のときに英語を習った河野先生のことに触れているので、参考までにお送りします。

添付本文には関係ありませんが:
河野先生は、当時としては珍しく自家用車で出勤されていたと記憶します。
ナット・キング・lコールの(もちろんフランス語ではなく)英語の「枯葉」をいきなり聞かされてディクテーションをさせられました。
わがS組で完璧にできたのは、唯一人、田崎君だったと思います。英語を聞く耳がよかったというより、この歌をすでに英語で暗記していたからだ、とのことでしたが。

読本は、Georger Mikes(ミケシュ)の「How to be an Alien」でした。 この本が面白かったので、後年、PenguinのpaperbackでMikesの本をかたっぱしから読みました。読んだ本は:

Hw to be Decadent
How to be a Guru
How to be Poor
The Land of the Rising Yen

ロンドン駐在中で手に入りやすかったこともありますが、もともとハンガリー人のMikesの英語が読みやすく、それでいて英国的ウイットとユーモアに富んでいること、どれも本が薄く、短いエッセーなので、ブロンテ姉妹の長編小説とは異なり、とっつきやすかったのが読むことができた本当の理由です。

 静岡高校同期生の川面君がCharllotte Bronteの「Jane Eyre」の感想文を送ってくれた。日本では「ジェーン・エア」と表記するのが一般的だが、さすが川面君は正しい発音に忠実な表記「ジェイン・エア」を用いている。

1.「原書で読む」
 かつてNHK第2放送で「原書で読む世界の名作」という番組があったが、川面君は、それを頼りに、ダイジェストとはいえ英語で読んだとのこと。偉い!脱帽である。「原書を読む」は僕も聞き流したことがある。Jane Austenの「Pride and Prejudice」だった。おぼろげな記憶では、Evelyn Waugh の「Brideshead Revisited」も扱っていたように思うが、いずれも毎回聞いていたわけでもなく、英語の原文を読んだわけでもない。

2. ブロンテ姉妹の作品と映画
 「Jane Eyre」も、Emily Bronteの「Wuthering Heights(嵐が丘)」も、英国駐在時代に英語の本は買ったのだが、もっぱら娘が読んで、僕は読まなかった。しかし小学生の頃、両作品とも映画が日本で公開になったことは憶えている。家では月刊雑誌「映画の友」を購読し、兄弟で回し読みをしていたし、兄や姉が映画について話しているのを聞いていたからである。でも僕自身は当時、これらの映画は見ていない。
「嵐が丘」の映画(1939年作品、1950年日本公開)を観たのは、ずっとあとで、家内がLaurence Olivier主演映画をいくつかVideo Tapeに収録していた中にあったためだ。

「嵐が丘」は1978年にBBCでTVドラマ化された。英国駐在中だったが、これを観ていない。欧州本土への出張で忙しかっただろうが、後年バーレン駐在中に、これDVD化したものを買い求めて観た。5話で構成され、255分のもので、筋はよく分かった。Heathcliff役Ken HutchsonがLaurence Olivierに及ばないのは致し方ない。

なお、末妹のAnn Bronteの作品については全く知らなかったが、BCCで1996年にTVドラマ化された「The Tenant of Wildfell Hall」が2006年にDVDになり、バーレンで2009年に売り出され、知ることになった。

このように、僕の英国古典文学鑑賞は、特に長編物については、BBCのTVドラマによる。聴覚障害者用の英語字幕が出るので、分かりやすいのだ。分からない単語が出るとDVDを止めて辞書を引く。但し、今年5月に日本に帰国後はバーレンに単身駐在中のようにDVDを観ることはなくなってしまった。

バーレンで買い求めて、まだ観ていないDVDは沢山手許にあるのだが、単身でないといろいろ雑事が多く、時間がとれない。川面君が、「原書で読む」をまじめに聞いていたのも名古屋に単身赴任中だとのこと。「やっぱり」と、思わず頬が緩んでしまった。

上記3つのBBCドラマに共通点がある。それは主演女優がいずれもハリウッド映画の様な美人でないということだ。

3. 映画「Jane Eyre」
 1983年のBBCドラマのJane役はZelah Clarkeと言い、小柄で美人でない点で原作に忠実。1944年ハリウッド映画のJoan Fontaineは美人すぎる?Rochester役のTimothy Dalton(日本ではダルトンと表記するが、ドールトンが正しいはず)は、明るい印象を与えるため適役ではなかったかもしれない。1944年の映画のOrson Wellesが不可解で陰気な印象を与えるためには適任だっただろうと思われる。

1944年の映画は観ていないので、演技の比較はできない。1944年作品をYou Tubeで覗いてみた。HelenがElizabeth Taylorで、Janeの子供時代はPeggy Ann Garner。彼女の名前は憶えていないが、アカデミー子役賞を取ったという「ブルックリン横町」が日本で公開されたことは憶えている。 Margaret O’brienはJaneが家庭教師をする相手のAdele。後年、Elizabeth Taylor, Margaret O’brienが共演した「若草物語」はよく憶えている。

1983年のTVドラマに話をもどす。BBCで1983年10月から12月までに、全11話(1話30分)が11週に亘り放映された。僕が観たのは、その内とびとびの4話くらいだったと思う。最初の方で、女子孤児院を牛耳っているBlocklehurstが女の子をいびるところは、Charles DickensのOliver Twistに出てくる孤児院や、同じくDickensのDavid Copperfieldに出てくるSalem Houseのheadmaster Creakleを想起させた。僕は臆病なので、Thornfield Hallの狂女(Rochesterの最初の妻)の謎と笑い声が怖かったことを思い出す。もちろんDVDでは11話全部を通しで数日かけて観た。全部で312分である。

なおBBCでは2006年にもTVドラマ化をしており、DVDも売りだされているが、僕は観ていない。

映画では、1970年, 1996年、2011年と更に3作品があり、ミュージカルは2000年にBroadwayで初演(日本初演は2009年)のものがあるというが、いずれも観ていない。1996年の映画は監督がFranco Zeffirelliなので、観てみたい気もする。

4.Haworth Parsonage(牧師館)
Bronte 姉妹の住んだ牧師館は、現在記念博物館になっている。
僕は英国駐在中の1981年のEaster Holiday家族で訪れたことがある。
今、アルバムを見ていたら、そこに入場券(40ペンス)が貼ってある。
この館のあるあたりは、Yorkshire Moor(荒野)といい、Heathが生い茂っている。(辞書では Heatherが生い茂った荒れ地をHeathというとあるので、植物をHeathとよぶのは間違いかもしれないが、英国人に「間違いだ」と直されたことはない。)
この旅行は、まず保養地のHarrogateへ行き、YorkのHotelに泊まり、York見物のあとにHaworthを訪れるものだった。とにかく荒涼としたところだった。
(画像のクリックで拡大表示)

館そのものは、日本人から見れば、立派な大きさであるが、「荒涼とした牧師館」と、今手許にあるThe Cambridge Guide to English Literatureには紹介されている。

僕の学生時代(1961年頃)の英語の先生の一人に河野一郎(政治家ではない)という方がおられ、今も翻訳家としてご活躍中であるが、1993年に「嵐が丘」の和訳を出されている。その翻訳中に、「Emily Bronte が執筆した背景を知らねばならぬ」との理由で、この荒涼 とした地に、しかも寒い冬に、英国人の友人の「それだけはやめろ」との忠告をふりきって 滞在されたという。このプロ魂は敬服に値する。


一般的には「ブロンテ3姉妹」と言われるが、2人の姉MariaとElizabethがいた。Charlotteは従い長女ではなく三女である。「Jane Eyre」の女子孤児院Lowood InstitutionのモデルであるCowan Bridgeという学校で、この2人の姉は伝染病にかかり、11歳と10歳で亡くなっている。「Jane Eyre」で亡くなるHelenはMaria をモデルとしているそうだ。 

以上