最近私が感銘を受けた本

『暴走する市場原理主義』  ・・・福島清彦著、ダイヤモンド社、2000円
 福島清彦氏は、昭和42年に一橋大学経済学部を卒業、昭和44年同大学院経済研究科修士課程修了、毎日新聞社に入社し、昭和51年米国プリンストン大学に留学、帰国して毎日新聞社に復社、昭和53年野村総合研究所に転じ、現在は野村総研(ヨーロッパ)社長。2000年3月12日の日経新聞に次のような書評がのっていました。
 米国の旗印「市場原理主義」は、実は建前にすぎないのに、米国はこれを武器に世界経済を振り回しているという。株高に浮かれる米国の姿に著者は危機を感じ取り、「世界でいま、いちばん危ないのは、アメリカ経済」と主張、本書でその病理を解明している。
 著者の福島氏は米国での研究生活が長く、現在は野村総合研究所(ヨーロッパ)の社長。有頂天になった米国は、本来、適用すべきではない分野にまで市場原理主義の網をかぶせ、一段と不健全な社会体質になっていると見ている。
 国内では所得を上回る消費という異常に加え、崩壊する家庭の増加、教育水準の低下、犯罪の多発などの副作用が起きている。体外的には各国に成長段階を無視して市場原理主義の導入を押しつけるあまり、インドネシアのように経済が破たんする例もある。
 軍事力が「ほぼ独走状態に入った」ために、米国民の政治意識にも影響が出始め、武力行使を簡単に認める風潮も芽生えている。しかも、米国は市場任せの弊害がひどくなると、大規模な政府介入で危機を回避するという「本性」をむき出しにする国家だ。
 放置しておけば、「誰も米国を尊敬しなくなる」し、「各国経済が次々と崩壊し、世界が長期不況に入る」という。ゆがんだ経済体質のツケは空前の対外債務という形でたまり、いずれドルや株価が急落するとの指摘には、著者の鋭い問題意識が端的に表れている。
 第3章で「市場原理主義を支える経済理論」と題し、『供給経済学』を理論的支柱として指摘しています。政府介入を強めるだけに終わった新古典派経済学に代わる新しい経済理論をつくり、政府介入をより少なくすることを訴えようとする動きのなかで『供給経済学』が生まれたという。
 供給経済学(Supply Side Economics)は,、「需要の創出と管理だけに目を奪われがちだった従来の経済学の弱点を指摘したものであるが、単に新古典派経済学の虚をついただけで、それ自身、新しい体系をなすものではない。・・・・その本来の役割以上にもてはやされているため、多くの問題を引き起こしているのである。」
 また、上記著書と同様、『ニュー・エコノミー論の虚実』と題する節で、「1960年代のニュー・エコノミックスと違って、ニュー・エコノミー論には理論的なものはない」と、批判を展開している。私は大いに共感するところが多い本でした。皆さんにも一読をお勧めしたい本です。