最近私が感銘を受けた本

『海のカテドラル』(La Catedral Del Mar)

イルデフォンソ・ファルコネス著、木村 裕美訳、RHブックス+プラス(武田ランダムハウスジャパン)、各950円(税別)

サンタ・マリア・ダル・マル教会(画像のクリックで拡大表示)
 スペインのバルセロナに旅行したことがありますか。本書の表題となっている『海のカテドラル』は、バルセロナに実在する教会です。バルセロナ港に面して立つコロンブスの塔の近くにある、サンタ・マリア・ダル・マル教会 Esglesia de Santa Maria del Marがそれです。
サンタ・マリア・ダル・マル教会 Esglesia de Santa Maria del Mar
船乗りたちによって14世紀に造られた、カタルーニャ・ゴシック様式の教会。かつてはここが海と陸の境で、危険な航海へと旅立つ人々の海の安全を海の聖母マリアに祈ったという。(「地球の歩き方」より)

 この本の著者は、1959年生まれ、スペイン バルセロナ出身で本職は弁護士とのこと。5年がかりで執筆した本書は、刊行直後からスペインでベストセラーとなり、1年近く売上げランキング首位を独占したとのこと。
 物語の舞台は1320年のカタルーニャ、後の主人公となる男の父の結婚式の日から始まる。領主の初夜権(領主・聖職者等が新しい夫婦の新婚初夜に花嫁と性交をする権利---ウィキペディア)、カステーリャとの戦い、当時のユダヤ人の扱われ方、宗教裁判の模様などが交錯し1384年に至る大河小説である。

愛、策謀、姦通、正義と信仰、そして自由――。本書『海のカテドラル』(2006年)は中世の荒々しい時代を生きぬく人間たちの一大叙事詩である。...
小説の背景は1320年から1384年、その60余年の歳月のなかで、主人公アルナウ・アスタニョルの人生が“海の聖母教会”の建設工事と平行して細やかに紡がれる。前半は、バスターシュの過酷な労働に耐えながら、聖母を深く慕い、恋にめざめ、性愛の呪縛から解放されるために戦場におもむく主人公の若き日々が描かれるのにたいして、 後半は、戦争、疫病、宗教間の対立や異端審問といった、史実にもとづく数々のドラマがフィクションの世界のなかで再現され、独自のアイデンティティーをもつ都市バルセロナがもうひとつの主役として浮かびあがる。...
この時代のスペインはまだ現在のように統一されておらず、カスティーリャ王国、アラゴン・カタルーニャ連合王国、ナバーラ王国に分かれていた。カタルーニャが独自の歴史と慣習をもつひとつの国で、イベリア半島内部よりも地中海に精神をひろげる海洋貿易国だった・・・ (「訳者あとがき」より)