2006年6月25日   

  上海便りー第九回上海国際映画際  


  6月18日ー25日の間、上海市内一円の映画館で終日国際映画際が催されました。毎年世界各国から比較的新しい映画を招き9日間に亘り上映されますが、やはり地元中国のものが一番多く、アメリカ、欧州各国がこれに次いでいます。例年日本からは少なく今回は4本の参加でした。小生は日本国内でも普段ほとんど映画館に足を運んだことはないのですが、中国にどのような日本映画が送り込まれているのかという興味と、その日本映画の題名につられて、日本ものを2本も見てしまいました。一本目は、日本でも未公開(世界初公開)の「佐賀のがばいばぁちゃん」(倉内仁監督、吉行和子主演)という、昭和30年前後(1950年代)の時代背景で母親と離ればなれになりながら、貧しいけれど前向きに生き抜く子供の成長ぶりを、テンポよく、ユーモアたっぷりに画いたなかなかの力作ででした。小生にとっては自分の子供時代とオーバーラップし、気持ちが映画の中に溶け込んでしまい涙、涙の104分間でした。中国人の苦しい時代と重なる部分が大きく、現在の中国人にも大いに迎えられるのではないかと思いましたが、残念なことに客席はまばらで日本人を中心とした観客がぱらぱらといるだけでした。自分が楽しんだだけに、良い映画でもやはり日本と名がつくと人気がないのかと少々がっかりして帰りました。
 二本目は「千年の恋」(堀川頓幸監督、吉永小百合主演、日本公開済み?)という映画でした(観られた方も多いかも知れません)。多分これもガラガラだろうと思いながら数日おいて映画館に入ってびっくり、なんとこれは広い劇場が中国人で超満員になっていたのです。一本目とのあまりの違いに何故、何故と我が目を疑ってしまいました。映画のストーリーは源氏物語を終始、紫式部(小百合)に語らせるもので、平安時代の時代背景(日本と中国の同年代比較で)や画面のきらびやかさには中国人の関心を引く部分も多いのではないかと思いましたが、何しろ源氏物語そのものが色恋を中心としたものなので、かなりの部分がベットシーンで占められ、ある種のポルノ映画と言っても可笑しくないくらいで、中国国内としてはかなりきわどい場面が多かったと思います。
 二本目の映画に何故これほどの集客力があったのか?小生の自問自答は下記です。
@ 中国でも「小百合スト」が非常に多い。
A 事前にDVDが既に出回わり、前評判があった。日本の映画やテレビ番組は放映されると、極端に言えばもう次の日には中国国内でDVDで販売されている(違法コピー商品)といわれています。中には日本の映画館の中で密かに録画されたものもあり、こちらで日本映画のDVDを買ったら何故か終始画面に人の後頭部が映っていたという笑い話もあるくらいです。因みにコピーDVDは7?20元(100?300円)で買えます。
B 「源氏物語」に対する関心が高い(書店に日本の代表的古典としてよくおかれている)。
C ポルノ的要素に対する期待(インターネット時代ですから情報伝達は早いでしょう)。
 たまたま二つの日本映画をこちらで見て感じたことは、今の日中関係の状況の中でも、 中国人は見るところはやはりしっかり見ているということです。日系の会社の電気製品や 資生堂の化粧品は高いけれど品質からすれば決して高くない、日系の会社は中国系や他の 外資系に較べ社員を大事にするので是非就職したい(給料もやや高いのも事実ですが)、な どと考える人達が大変多いのもこの類いで、国際関係は国際関係として皆冷静に現実的に 自分の眼で物事を見ているのだと思います。
 昨年の反日デモ以降日本からの中国への投資が減少し、中国経済に少なからぬ影響が出 始めているため中国政府も密かにこれを案じている様子ですが、自民党総裁選をにらみな がら最近盛んに日本に対し秋波を送っているのも中国側の現実主義の表われだと思います。
 さて小生にとっては、「佐賀のがばいばぁちゃん」の方がよほど楽しく優れた作品だと思 いました(是非観られることをお勧めします)。世界初公開で多分宣伝する時間も十分無か ったのでしょうが、さて中国でのこれからの人気はどうなりますでしょうか。

以上