2006年6月26日   

  上海便りー上海協力機構の舞台  


 6月14日?18日の5ヶ日間、当地で上海協力機構の5周年記念サミットが華々しく開催されました。上海協力機構は構成国が中国、ロシアに中央アジア四カ国という珍しい組み合わせで、今回はイラン大統領などもオブザーバー参加するということで関心も高く、世界的にも広く報道され、一躍この会議が耳目を集めたのは周知の通りです。
 当初5年前に機構が設立されたときの目的はテロ対策とか経済交流とかのゆるやかなものだったようですが、国際的な民主化の波や折からの原油高騰等を背景として、今や関係国の政治・経済的提携関係を著しく強化する方向へ踏み出していると言われています。今年のサミットに際して中国政府の力の入れようが、現地のわれわれの眼からはいささか異常と思えるほど大掛かりなものに映つたことをお伝えします。
 先ず14日から18日まで5日間、上海市内の政府機関と小・中学校を全て休みとし、会議が開催される会場付近、また各国首脳が宿泊するホテルや通過する道路に隣接する会社・事務所等も一斉に強制的に休まされました。上海市内の凡そ約半分の会社がこの会議のために5日間も休まされたことになります。安全対策のためなのでしょうが、通行規制も含めあたかも一種の戒厳令下にあったといってもよいでしょう。
 また各国首脳が移動する道路から見渡せる周辺のビルの壁面などには急ごしらえでネオンがつけられたり、道路脇に銅像や花の彫像が新しくあちこちに建てられたりしました。初めは何で急にこんなものが出来たのかと不思議に思ったものでしたが、サミットが終わってみればネオンなどは直ちに消えてしまったのでその謎が解けた次第です。
 プーチン大統領が泊まった日系の花園飯店に到着当日たまたま用事があって行きましたが、ロビーの入り口はそれは大変な厳戒体制で、空港と全く同様のセキュリティチェック機器が設置されホテルに入るのにも一列に順に並ばされて漸く中に入れてもらえる有様でした。
 会議の初日には市内中央を流れる黄浦江に色とりどりの遊覧船を浮かべて首脳陣一行を乗せ、盛大な花火大会が挙行されました。またサミット開催中には、関係者一行を上海市内で一番大きな劇場に招き華やかに歓迎の踊りの舞台も設けられました。
 このようにわれわれ(先進国?)にとっては一寸考えもつかないような、また多分上海でも一つの会議のためにこれほど大規模な準備がなされたことはなかったと思われるようなことが次々に起こったわけです。各国首脳陣に対してそれこそ下えも置かぬ最高のもてなし振りを示すためありとあらゆる演出が重ねられたのだと思いますが、それだけにこのサミットにかける中国の意気込みが並々ならぬものであったことを肌で感じました。
 推測するにこのサミットには中国にとって二つの大きな目的があるように思われます。
@ 参加国は比較的独裁色が濃い国が多く、外からの民主化の動きをなんとか阻止したいという思惑の点では考え方が一致していて、中国としても互いに連携を強めることにより自らの体制維持に繋げていきたいと考えていること。
A ロシア、中央アジア諸国を中国の将来の成長市場としてその発展に期待し、経済的関係強化をねらっていること。
 このためには中国のショウウインドウである上海を最大限アッピールし、発展している中国をいやが上にも印象付けておきたいという思惑があったのだと思います。
 今後サミット参加国が、国際政治の面ではことによれば日米安保やNATOなどに対抗するような軍事ブロックに成長していく可能性もなしとはしませんし、また経済面では中国にとり期待する市場の一つとして特に中央アジア諸国の成長に力を貸していくことになるのは間違いないように思われます。
 今回の上海サミットでの中国の華やかな演出や尋常でない力の入れ方を見るにつけ、この国の目指している将来の方向にいろいろ想いがめぐるこの頃です。
 因みに、このサミットのために会社や学校を休み、降って沸いた特別休日をもらった人達の多くはこの時とばかり旅行に出掛け、その余波で郊外の高速道路は混雑が激しかったというおまけまでついた次第です。

以上