2008年(平成20年)5月31日  

  上海便り−良くなった上海交通事情  


 「左行右立、文明乗梯、先下后上、文明登車」、「我当然不在此画面中」。これは上海市内の地下鉄のプラットホームからみた向かい側のトンネル壁面に書かれている標語と写真です。日本語では「乗り降り、エスカレーター等構内は左側通行、階段では他の人に注意しましょう、乗客が降車してから乗車しましょう、乗車では他の人に注意しましょう」、「私達は勿論この写真の中にはいませんよね」となります。その写真は皆われ先に地下鉄に乗り込もうとしてドアーの前で黒山の人が押しくら饅頭している光景が写し出されています。
 要するに、乗客達が無秩序に階段を行き来し、乗り降りしたりして、一定のルールに従っていないために構内が絶えず混乱し、これを何とかしなければと、駅当局が窮余の一策で、守るべき秩序、ルールを喚起して、乗客達に訴えているというわけです。中でも「先下后上」は最も重要な一句で、これには、今年のオリンピックや2010年の上海万博までには文明国の一員としての格好を示す上でも上海市民(否中国人全体か)に何とか馴れて守って欲しいと願う当局の悲痛な思いも込められています。東京人が上海(否中国か)に来てまず驚くのは、地下鉄、タクシー、バス、ビルのエレベーターで、人が降りる前に我先に皆乗り込もうとする中国人のマナーです。エレベーターでも降り方に馴れていないと目指す階で人が先に乗り込んできてしまって降りられずそのまま動き出してしまう最悪のケースもあります。乗り物は皆ほぼ同じ様な状況といえましょう。それでも年々徐々にマナーは良くはなってきていますが、果たして万博までに、東京並に改善が見られるかとなると?マークです。何故なら、東京以外の先進国の主要都市でも、大阪を始めとして大なり小なり同じようなところが多いと聴きます。エレベーターはさておき、乗り物の乗り降りの無秩序は何も上海だけに限ったことでもなさそうだからです。
 年々の10%以上の経済成長と共に、上海の地下鉄も一気に延伸が続いており、小生が来た5年前にはやっと3号線が出来たばかりでしたが、現在9号線(部分開通含め)まで開通しており、郊外のベットタウンの拡大に合わせ、将来13号線まで計画されています。東京の様に網の目のようにとは行きませんが、それでも市内でも地下鉄で移動出来る場所がかなり増えてきて、これまで商用などでタクシーでなければ行けなかったようなところも地下鉄で行けるようになってきています。それにつれて乗り換えなどでは、構内の移動距離が年々長くなり、5階建てのビルを縦に移動しなければならないようなところも増えてきました。東京並と言えます。これからは市内観光でも地下鉄利用で行けるところが増えるでしょう。
 庶民の足であるバス(公交=公共交通)は健在です。中国の主要都市はどこもバス交通が発達していて、市内はバス路線を繋ぎ合わせれば、大抵のところにはたどり着くことが出来ます。冊子になっている市内地図を買うと、中に市内全バス路線の行程と主要停留所の名前が書かれているページがあり、目的地への路線の選択と路線変更のための乗り換え停留所を確認してその通り移動すれば大概は目的地に行けます。丁度日本の鉄道時刻表で電車の乗り継ぎを調べるのと同じパターンで、路線を組み合わせて行程を決めるのも結構楽しいものです。ただ、バスは路上を動くのと、停留所の数が多く、交通マヒもあり得るので、時間に余裕が無ければお勧め出来ません。たまにバスに乗ると、小生は最近は若者によく席を譲られます。車内で車内道徳をテロップで流していますが、年寄り、弱者を大事にとアッピールしており、白髪の頭を見ると年寄りということで同情されるわけです。最初は後背からいきなり肩を叩かれ、何も悪いことをいていないのに何事ぞ、と一瞬身構えたこともありましたが、好意で席を譲ってくれているということが分かってからは、声をかけられれば喜んで素直に座らせてもらうことにしています。最近の日本の若者には見ることの少ない美徳の一つではないでしょうか。上海のバスも5年前には空調車はごく一部しかなく、大半は「空調なし」バスで、市内はどこに行っても大体一律1元でしたが、いまや全て空調車で、バスも年々立派になってきてます。距離に応じて料金も変動してきていますが、最低料金はまだ2元ですから庶民の足であることに違いはありません。スリなどの盗難に気をつけていれば、案外気楽な交通手段だと思っています。
 上海のタクシーは使う方の立場としては、コスト、時間、安全性等から大変便利な乗り物だと思っています。中国は都市別に料金が異なり、上海の初乗り(3KM)は11元で(5年前10元)、北京より高い全国一の料金です。5年前に来た時は、タクシーの事故も時折見かけ、乗ればこんなにスピードを出す怖い乗り物はないとハンガーをがっちり握って緊張していたものですが、最近では意外にタクシーが安全運転している様子に気づき、またタクシー事故も見かけなくなったので安心して乗っています。行き先だけはっきり伝えれば遠回りすることもなく、料金をごまかされたりすることもまずありません。逆にこちらが遠回りをしたかなと思った場合など(運転手は混雑を避けたためと思っているのかも知れませんが)一方的に値切って降りてしまう場合も偶にあります。地方に行けば雲助まがいの運転手が沢山ごろごろしているのと較べれば、上海や北京のタクシーは運転手が少々無愛想なこと、車体が少々がたがたしているのを別にすれば全国一安全といえると思います。
 車の台数規制のため、業務用優先で市内で個人車を持つのは登録、税金などで大変なようです。そのためナンバープレート売買の市場があり、どうしても急いでナンバーを欲しい人は市場で高い価格で購入したり(3〜4万人民元とか)、態々隣の浙江省などに行って登録したりします。それでも若者中心に保有台数が増え、新米ドライバー横行が交通事故多発要因となっています。市内への大型車、外省車の乗り入れは厳しく規制されています。
 市内の交通マナーも大分よくなりました。5年前は赤信号でも皆平気で横断歩道を渡っていましたが、最近では公安の代わりに交通協力員が路上で指導し、流石に人も車も信号無視は少なくなりました。それでも、旅行者などが横断歩道を渡るときには、ここは車優先社会で、何が起こるかわからない中国のことですから、前方だけでなく、360度見回わし安全確認しながら進まねばならないこと当然であります。
 近距離、遠距離移動も、日本の新幹線技術導入の高速列車が走り始め(中国側は国産技術開発と言ってますが)、近々上海?北京間も高速列車が走ることになっています。  

了